ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 - 渡まち子

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士

◆最後の最後まで、巧妙な仕掛けで悪を制裁するリスベットの知性に、溜飲を下げる(70点)

 スウェーデン発ミステリー「ミレニアム」三部作の完結編。権力側の陰謀に決して負けないヒロインの反骨精神に尊敬の念を覚える。自分に罪をきせ命を狙った敵と対決し、瀕死の重傷を負ったリスベット。病院から退院後、収監されてしまう彼女はほとんど身動きがとれない“眠れる女”だ。だが彼女の無実を信じるジャーナリストのミカエルは、ひそかに連絡をとる術を見つけ出す。一方、ミカエルの妹で弁護士のアニカや、リスベットのハッカー仲間らも、独自の方法で調査を進める。なぜリスベットは12歳で精神病院に入れられ「無能力者」として後見人制度の下に置かれたのか。ついに始まった裁判で、リスベットは自分に起こった忌わしい出来事を話し始める…。

 信じられないほど残酷で身勝手な、元公安警察「特別分析班」の男たちは、まるで旧時代の遺物のよう。スウェーデンの過去の歴史の暗部を覗き見るようでゾッとする。リスベットはそんな彼らの秘密を握る要注意人物として抹殺されようとしているのだが、事件は複雑で、リスベットの家族関係の悲劇までもがからむ壮大な展開に一瞬も目が離せない。誰も信用せず、外見も内面も攻撃的なリスベットのキャラクターに最初は感情移入は難しいが、本当に信頼している人間には、短い言葉で心からの感謝を捧げる彼女こそ、真に誠実な人間なのだと分かるだろう。裁判に望むとき、黒のパンクファッションでキメてみせる彼女のいでたちは、闇の権力と理不尽な暴力への毅然とした「NO!」の決意表明だ。最後の最後まで、巧妙な仕掛けで悪を制裁するリスベットの知性に、溜飲を下げる。それにしてもリスベットを何年もの間苦しめてきた精神科医のテレポリアンのなんと憎々しいことか。医師という立場を利用して彼が行う悪事には、怒り心頭だ。このトンデモない男の末路は映画を見て確かめてほしい。また、執拗にリスベットを狙う無痛症の大男のラストも必見。とても太刀打ちできそうにない巨悪を相手にするリスベットだが、彼女には、並はずれた知性と、味方になって彼女を守る“狂卓の騎士”たちがいる。3部作すべてでリスベットを演じきったノオミ・ラパスの、射るような瞳が忘れられない。そして時折見せるさびしげな横顔も。“女を憎む男たち”という原作の副題は1のものだが、3部作すべてに貫かれたテーマだ。だが小柄なヒロインは自分を虐げるおぞましい存在を決して許さない。悪に対する不屈の魂。それがこの秀作ミステリーの本当の主題だ。

渡まち子

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