◆事件の解決は3に持ちこされるが、次回への興味を最高の形でつなぐ巧みなストーリーテリングに、引きつけられる(65点)
世界的ベストセラーのミステリー小説を映画化した「ミレニアム」3部作の第2弾。天才ハッカーのリスベットとジャーナリストのミカエルがほとんど別行動なので前作に比べて少し物足りないが、リスベットの過去が現代の事件とつながる展開が面白い。孤独に生きてきたリスベットが、愛してしまったミカエルの前から姿を消して1年。社会派雑誌「ミレニアム」で少女売春組織の特集の準備を進めていたジャーナリストが殺害される。現場にはリスベットの指紋がついた銃が残されていた。その後、リスベットの後見人のビュルマンも殺害され、リスベットは容疑者として指名手配されてしまう。彼女の無実を信じるミカエルは、雑誌発売に関する脅迫を受けながらも、リスベットの嫌疑をはらそうとする…。
前作1は1話完結の形をとっていたが、本作2と次の3とは強く連動している。一気に見るのがお勧めだが、何しろ登場人物が多く展開がスピーディーなので、集中力が必要だ。本作では、身に覚えのない殺人事件の容疑者にされてしまったリスベットの衝撃的な過去が語られると共に、警察内部に存在した特殊機関の恐るべき陰謀が浮かび上がる。リスベットというヒロインは、小柄で華奢、全身をタトゥーとピアスで武装したかのような外見。中身は、誰にも媚びず、人を容易に寄せ付けない性格でバイセクシュアル、さらに天才的なハッカーという極めて特異なキャラクターだ。だが、本当に信じられる相手には心を開く。こんな人物像に至るのが納得できるほど、彼女が封印していた過去は忌まわしい。捜査の中で浮かび上がるザラという謎の男、無痛症という特異体質のザラの手下“金髪の巨人”が、リスベットにつながる秘密がとりわけショッキングだ。さらに、自らの罪を隠ぺいするためリスベットを亡き者にしようとする特殊機関の老人たちが、歴史の亡霊のようで不気味である。瀕死の重傷を負ったリスベットは、はたしてどうなるのか。事件の解決は3に持ちこされるが、次回への興味を最高の形でつなぐ巧みなストーリーテリングに、引きつけられる。「火と戯れる女」とは、リスベットが過去に起こした事件に由来する副題。北欧社会の裏側に潜む女性蔑視と暴力に戦慄を覚えた。と同時に、一人の女性の人生を破壊しようとする巨悪に立ち向かうヒロインの気概が胸を打つ。
(渡まち子)