ミルク - 福本次郎

ハリウッド的な作品の対極をなす映画作りの姿勢に別の意味での豊かさを感じた。 (点数 50点)


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ひとり息子の恋にほおを緩める母親は我が子の成長が楽しくてたまら
ず、好意を寄せる女の子のことを聞きだそうとする。一方、母の恋に
息子は強烈な嫉妬を覚え、相手の男に殺意すら抱く。母一人子一人、
父親がいない環境で仲良く暮らしていたはずの2人の関係に初めて入る
亀裂。映画は、多感な年ごろになった少年が外の世界の出来事に触れ
ていくうちに大人になっていく姿をとらえる。カメラはじっと固定さ
れたまま登場人物をフレームに収めるだけ。その冗長とも思える長ま
わしのカットは、ゆったりと流れる時間という芳醇に満ちている。

父を亡くしたユスフは母の商売を手伝いながら詩を書いている。ある
日、少女への憧れを綴った詩が雑誌に掲載され有頂天になっていると、
徴兵検査の通知が来る。そんな折、母は駅長と仲良くなっていく。

幼いころは山奥の小屋のようなところに住んでいた彼が、町で文明に
触れ食事中も手放さないほどすっかり本の虜になっている。因習から
の解放と国民の教化こそが西欧化政策を取るトルコの未来を示唆して
いだ。

映像はあくまで寡黙でセリフは少なく音楽もない。その分、風のそよ
ぎ・植物のざわめき・小鳥のさえずりといった自然の音が非常に饒舌
で、人々の生活を効果的に彩る。そこに劇的な展開があるわけではな
く、刺激的なシーンがちりばめられているわけでもない。ハリウッド
的な作品の対極をなす映画作りの姿勢に別の意味での豊かさを感じた。

福本次郎

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