ミッシングID - 青森 学

自分探しをテーマにした映画は数多く有るが、それは人にとって自分自身が最大の謎であることの裏返しなのかも知れない。この映画はそんな多くの人が持つ疑問を起動させる。(点数 83点)


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主人公であるネイサン(テイラー・ロートナー)の生い立ちの謎が後半まで解き明かされないので気になり、集中力を持続させて観ることが出来た。ストーリーを牽引する謎はそれほど不可解なものでもなく、全編を通して見ると腑に落ちる謎ばかりで、置いてけぼりを食らったような居心地の悪さを感じずに済んだ。但し、ストーリーの進行上、映画的なご都合主義的展開が有るのだが、そもそも虚構にもっともらしい結末を用意するためには避けては通れないことなので、多少の粗には目をつむることが出来る。

エシュロンを想起させる通信傍受システムがこの映画を陰で支えるもう一人の主人公だ。エシュロンはあらゆる電波通信を傍受しデータベースに蓄積して分析するシステムで、アメリカ人のパラノイア的病理を象徴する映画ではお馴染みのガジェットである。この傍受システムが実在するのかは確証は無いのだが、アメリカ人の妄想的信憑によって都市伝説の中では確固たる存在感を示している。この作品でもネイサンの電話がいとも簡単に盗聴されていて、エシュロンの存在を間接的にほのめかしている。映画の中では犯罪組織もCIAもインターネットや電話回線を通じていとも簡単にネイサンの居場所を突き止める。映画ではよく見掛けるシーンなのだが、この強迫観念のような誰かに監視されているという意識は多くの人から共感を得やすい心理なのだろうか。

『ボーンアイデンティティー』シリーズの中心に有った”自分探し”というテーマにどれほどの需要があるのか分からないが、自分がどういう人間がであるのかを知る好奇心は人間の根源的な欲求と言っても差し支えないだろう。いみじくも遡れば1977年に『ルーツ』というテレビドラマが放映されて黒人少年クンタ・キンテを始祖とする親子三代に渡る、祖国のガンビアから奴隷として売られアメリカで苦難の道を歩む黒人の人生が多くの関心を集め大ヒットしたのだが、自分に関わるもの、さらにいえば自分自身への問いというのはいくら時代が下っても失うことは無い。自らの”ID”に対する答えの希求はいつの時代でも最大の個人的関心事だと云えるだろう。この『ミッシングID』では『ボーンアイデンティティー』のような主人公が記憶喪失とか少しばかり込み入った内容ではなく、ネイサンの生い立ちと命を狙われる理由が至ってシンプルなので分かりやすい点にも好感が持てた。

主人公のネイサンを演じるテイラー・ロートナーは空手のチャンピオンになった経歴を持つ。スタントシーンも派手で後半、野球場のスタンドにある障害物を華麗な身のこなしで駆け抜けるさまはパルクールと言われるストリート系のスポーツの実践だ。昔、「YAMAKASI」というフランス映画がそのパルクールの存在を広めた嚆矢で、日本でも公開されてその知名度も上がった。
アクションシーンが多い本作の主役に卓抜した運動センスを持つ彼に白羽の矢が当たったのは別段不思議なことでも無いようだ。

青森 学

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