最後まで先が読めない展開に時間を忘れる作品だった。(点数 70点)
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知恵と機転で命の危機を生存のチャンスに変える主人公。彼の奇想天
外な発想と驚きの行動力は時にスリリングで時にコミカルだ。映画は
幻の名画を巡るユダヤ人画商とナチス親衛隊員の駆け引きを通じて、
ホロコーストのか弱き犠牲者というステレオタイプではない第二次大
戦中のユダヤ人像を描く。時代と共に2人の立場が幾度も反転するが、
一方は心の強さを保ち続け、他方は欲望をむき出しにする。その両極
端の人間性が絶妙の対比をなし、物語を底辺から際立たせている。
【ネタバレ注意】
ミケランジェロの絵を隠し持つ画商の息子・ヴィクトルは、絵のあり
かを親友のルディに教えてしまう。SSに入隊したルディは密告、絵は
ドイツ軍に没収された上、ヴィクトル一家は収容所送りになる。
後の独伊交渉の場で、没収した絵が贋作と判明、ルディは真作を手に
入れろと厳命される。だが、収容所にいたヴィクトルからその所在を
聞きだすために彼を移送中、輸送機が撃墜され、どさくさにまぎれて
ヴィクトルはルディの身分を盗み、SS将校になりすます。かつての主
人と使用人の子の関係からユダヤ人とナチスに変わり、それが再び逆
転する運命の皮肉。
さらに大胆な取引を持ちかけたり、正体を知る婚約者が現れたりと、
ナチスを翻弄しつつも絶体絶命のピンチを何度も用意し、観客を飽き
させない仕掛けが何重にも張り巡らされ脚本が素晴らしい。最後まで
先が読めない展開に時間を忘れる作品だった。
(福本次郎)