ぼくの大切なともだち - 岡本太陽

パトリス・ルコントが描く友情の物語(60点)

 パトリス・ルコント。フランスはパリ出身の映画監督だ。『仕立屋の恋』『髪結いの亭主』『イヴォンヌの香り』『リディキュール』『列車に乗った男』等代表作は多数、そして数々の映画賞に輝いている。特に『リディキュール』ではカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した。また日本では『髪結いの亭主』で人気に火がつき、現在もその人気は衰えていない。

 その彼の新作『ぼくの大切なともだち(原題:Mon Meilleur Ami)(英題:My Best Friend)』が今年公開した。パトリス・ルコントはコメディ、ドラマ、そしてラブストーリーの得意な映画監督だが、今回の作品もコミカルなコメディ仕立て。それでいてホロっとさせてくれる様な心温まる映画である。

 パリにある骨董品ギャラリーでアートディーラーとして働くフランソワ(ダニエル・オートゥイュ)はハンサムなルックスもゴージャスなアパートも恋人もいる成功した中年男。そんな彼と彼の忠実なビジネスパートナーのキャサリン(ジュリー・ガイエ)はあるオークションに出席していた。その場でフランソワはある1つの花瓶に執着を示す。それは友情をモチーフにした古代ギリシャのものだった。キャサリンはそれは不必要だと言うが、フランソワは彼女の忠告を無視し、高額でその花瓶を買い付ける。納得のいかないキャサリンだったが、その日はフランソワの誕生日でもあった。仕事仲間が集まるレストランで例の花瓶の不満を漏らすキャサリン。そして彼女は自分の事しか考えていないと信じるフランソワには友達が1人もいない言う。それに反論するフランソワ。だが、キャサリンはある提案をする。もし、友達が1人でもいることを証明出来たら、その花瓶はフランソワのもの。もしそれが出来なければ、花瓶は彼女が頂くというものだった。友達なんかいるに決まっていると信じ切っているフランソワにはそれは馬鹿馬鹿しい賭けだった。キャサリンに友達がいる事を証明するために友人と思われる人にコンタクトを取ろうとするフランソワだが、そんな折りに彼はブルーノ(ダニー・ブーン)というタクシードライバーに出会う。事あるごとに出くわすフランソワとは全く正反対の性格のブルーノを厄介に思っていたフランソワだったが…。

 簡単に言うと、この映画は、人の気持ちが理解出来ない自分勝手な男の親友探しの物語。シチュエーションは全く持ってリアリティには欠ける。まるで月9ドラマの様にドラマチックで運命的。内容もどこかで観たことあるようで安っぽい。そしてファイナルアンサーで有名な『クイズミリオネア』がクライマックスに用意されている。親友探しのストーリーとミリオネアがどう結びつくかは観てのお楽しみだが、パトリス・ルコントの映画にミリオネアのファイナルアンサーが用意されているとは非常に意外だった。

 大抵どんなに安易な映画でもテーマがあったりするのだが、この映画では、「あなたにはほんとうの親友と呼べる人がいますか?」だったり「親友とは一体なんですか?」ということを問いかけているのだろう。ありきたりなストーリーだが、なかなか深い疑問を呈す所はさすがパトリス・ルコント。物語の中でいくつか登場人物によって「これが親友である」という定義が立てられるが、実際それは人それぞれ。人の価値観で変化しても良いものだろう。トラジックコメディであり、ちょっと泣ける、というよくあるストーリーだが、どういうわけか最後までサラリと観ることが出来るのは一体何故か。やっぱりパリには魔法があるのだろうか。

岡本太陽

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