マイレージ、マイライフ - 福本次郎

◆人間関係のしがらみを捨て、人を解雇することを生業にしている主人公が薄っぺらな生き方に気付き、人生に本当に必要なものは何かを問いかける。たまったマイレージでワンランク上のサービスを受けて優越感に浸る姿が滑稽だ。(80点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 人間関係のしがらみという名の荷物をすべて捨て去り、人の働き口を奪うことを生業にしている男。もちろん彼にも多少の後ろめたさがあるのだろう、しかし、それを意識すまいと心がけ、他人からは充実しているように見られたい。そんな主人公が薄っぺらな生き方に気付き、人生に本当に必要なものは何かを問いかける。地に足のついた暮らしよりも忙しく動き回る自分の姿に酔っていて、一年中飛行機に乗り出張ばかりのなかで、ワンランク上のサービスを受けて優越感に浸る姿が滑稽だ。

 企業のリストラを専門に請け負うライアンは、出張先でアレックスという出張族の女と知り合い一夜を共にする。その後、新人のナタリーの教育係として、ライアンは彼女を連れてまた出張に出る。

 ナタリーが提案するWEB電話でクビを宣告するやり方に反対して、ライアンは直接相手に会って語りかける大切さを説く。このあたり、ライアンは根っからの冷血漢ではなく、職業と割り切っていても相手に敬意を失わず、実践が伴わずアイデアと効率重視だけのナタリーとは一線を画す。彼の、ショックで言葉を失う面接相手のプライドをくすぐり退職に同意させる手法は非常にリアルで、業績不振の会社に勤める従業員にとっては他人事ではない。また、メールで辞表を送りつける若者が米国にもいるというのには片腹痛かった。

 やがてWEBリストラが実用化しライアンたちの仕事から人間性が失われて行くのと反対に、妹の結婚式で家族や友人に囲まれたあたたかさを認識するライアン。夢だった飛行1000万マイルを達成してもその喜びを分かち合える人がいないむなしさに襲われる。逆にライアンに解雇を言い渡された人々が身近な人のの支えで新たな生活を始めたことを語りだす場面と好対照をなし、カネや地位といったビジネスでの成功よりも、落ち込んでいるときに親身になって心配してくれる人が周囲にどれだけいるかが豊かさを測る物差しであると教えてくれる。ナタリーの推薦状を認めて救われたライアンのふっきれた表情がまぶしかった。

福本次郎

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