ボーイズ・オン・ザ・ラン - 福本次郎

◆何事にも今一歩が踏み出せないのは自信のなさが原因でとわかっているのに、目に見えない殻を脱却できない主人公。その姿には突き放したくなりつつもつい共感を覚え、しまいには応援したくなるほど人間的な魅力に満ちている。(60点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 押しが弱いために仕事ではうだつが上がらず、好きな女の子との距離もなかなか縮められない。そんな、何事にも今一歩が踏み出せず、どうしようもないほどウジウジした男の生活がリアルに再現される。誕生日をテレクラで迎え、せっかく彼女をホテルに誘っても何もできず、挙句の果てにライバル会社の社員に売り場も彼女も横取りされる。自信のなさが原因であるのがわかっているのに目に見えない殻を脱却できない主人公の姿には、突き放したくなりつつもつい共感を覚え、しまいには応援したくなるほど人間的な魅力に満ちている。

 ガチャポン会社の営業マン・田西は同じ会社の企画部のちはるに想いを寄せている。彼女とメール交換していくうちに親しくなり、ライバル社の青山とダブルデートに持ち込む。だが、風邪をひいたちはるの見舞いに行った時、隣人のソープ嬢の部屋に隠れているところを見つかってしまう。

 他人にどう思われるかを気にするあまり、つい本音を隠そうとする田西。彼なりのやさしさであり処世術なのだが、はたから見ていると傷つきたくないゆえに不器用にかっこつけていとしか見えない。それは本人も気づいているけれど、そこに安住する弱さを克服できずにいる。さらに、青山にもてあそばれた挙句捨てられたちはるのために田西は奔走するが、気持ちばかりが空回りする。映画は田西の日常を通じて、冴えない人生から這いあがれない人々の心の叫びを代弁する。

 やがて、青山への怒りを爆発させた田西は殴り込みを宣言、会社の同僚のコーチのもとボクシングの特訓を始める。そして、モヒカン刈りにして気合いを入れた田西は青山の会社に勇躍乗りこむが、全く歯が立たずあっさり返り討ちにあう。しかし田西は決してギブアップせず、初めて意地を見せる。その後、ちはるへの思いを断ち切って街を走りだす。ロードワークを始めたころはすぐに息が上がっていた田西がずっとずっと駆け続ける。現状を打ち破ろうと戦う勇気を持ち精いっぱい努力しても、結局世界は何も変わらないかもしれない。それでも、少なくとも自分は変わることができるとこの作品は教えてくれる。

福本次郎

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