ホースメン - 小梶勝男

◆「羊たちの沈黙」「セブン」に「SAW」シリーズの要素を加えた猟奇サスペンス。チャン・ツィイーが犯人役を演じているのが見もの(67点)

 銀のトレーに載せられた、大量の人間の歯が見つかるところから、物語は始まる。最初から気味悪く、猟奇ムードはたっぷりだ。そして、釣り針とワイヤーで吊られた全裸死体が登場し、現場に残された「来たれ」というメッセージが謎をかける。連続殺人事件を捜査する主人公は、デトロイト警察のベテラン刑事。妻に先立たれ、仕事に没頭し過ぎて2人の子供たちからは愛想を尽かされている。演じるデニス・クエイドがいい。役作りのためだろう。やや太って、うらぶれた感じをうまく出している。そして突然、驚きの展開が訪れる。最初の犠牲者の養女(チャン・ツィイー)が、犯行を唐突に自白するのだ。しかし、事件はそれだけでは終わらない。

 「羊たちの沈黙」「セブン」に「SAW」シリーズの要素も加えた猟奇サスペンス。猟奇事件に聖書の一節を関連させるアイデアに新味はないが、犯行の「動機」の部分は衝撃的だ。詳しくは書けないが、ある意味、現代社会の問題をとらえていて、絵空事のような猟奇殺人にリアリティーを与えている。

 直接的な猟奇殺人の描写は案外少ないが、吊られた死体の様子から、残酷さは十分に伝わってくる。チャン・ツィイーが犯人役を演じているのも見ものだ。清純そうな彼女が一転して、怪物じみた存在に変わる。その変貌はなかなか見事で、様になっている。

 しかし、いろんな要素を盛り込みすぎたきらいはある。せっかくのツィイーの熱演も、彼女が主役にならないため、物語の後半では印象が薄くなってしまった。殺人犯のツィイーと刑事のクエイドの関係が、「羊たちの沈黙」シリーズの、レクター博士とFBI訓練生クラリスのように、ストーリーを引っ張っていくような関係性になっていかないため、映画が終わってしまえばツィイーの印象が余り残らない。ツィイーで売るには、役柄が中途半端過ぎる。そこが決定的に弱いと思った。

小梶勝男

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