ペーパーバード - 福本次郎

不器用だが筋の通った生き方が美しい。(点数 60点)


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停電で消えた電球を指先でつつく父と息子、それを見つめる妻。家族
3人がささやかながら暮らしを楽しむ姿をスケッチしたプロローグが、
おとぎ話のような温かさを運んでくれる。しかし、小さな幸せも戦争
の前ではあっけなく崩れ去り、主人公はコメディアンであるにもかか
わらず、舞台を離れるといつも苦虫をかみつぶした顔になってしまう。
反体制派のレッテルを張られてもなお権力を風刺し続ける彼の、不器
用だが筋の通った生き方が美しい。

【ネタバレ注意】

スペイン内戦時、芸人一座の喜劇役者・ホルヘは空襲で妻子を亡くす。
1年後、一座に復帰すると、ミゲルという少年が押し掛け入門し、相棒
のエンリケと共に彼の面倒を見るハメになる。

最愛の息子を思い出すせいか、最初のうちホルヘはミゲルに辛く当た
る。市場で旧知の八百屋にミゲルを亡息と間違えられた時のホルヘの
胸の痛みは耐えがたいものだったはず。だからこそミゲルの盗癖をき
つく戒め、ミゲルの親代わりになって育てるのが自分の未来につなが
ると感じたのだろう。そのあたり、彼らの距離感が縮まっていく様子
が感情豊かに語られる。

また、巡業先の田舎街で、村長が一座の看板歌手・ロシーナを見染め
るエピソードが時代の雰囲気を濃厚に反映させている。一生懸命ロシ
ーナを口説く村長は、同じく男やもめながら妻子を忘れられないホル
ヘと好対照をなし、ホルヘの悲しみの深さを浮き彫りにする。

福本次郎

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