ベイマックス - 青森 学

人間をケアすることを使命とするロボットの健気さが涙を誘う。(点数 93点)


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物語の舞台はサンフランソウキョウというサンフランシスコと東京が融合したような街で未来か別次元の世界かは定かではないが、現実の世界より少し科学技術が進歩している。
主人公はヒロという名の14歳の天才少年。
日本の敗戦時、マッカーサーが日本人の精神を14歳の少年に喩えていたが、頭が良く勝ち気でナイーヴでちょっと思慮が足りないのはアメリカ人が今でも抱く日本人のイメージなのかも知れない。
ラセターはこの事を踏まえて主人公を14歳の少年に設定したのだろうか?

悪徳企業が開発した瞬間移動装置がピーター・ハイアムズ監督の『タイムコップ』(1994年)のタイムマシンと酷似している。これはオマージュなのだろうか?
そのほか、ベイマックスが主人公の手によってアップデートされる際、カンフーの型をインプットされる様子はさながら『マトリックス』のようである。
既視感というのか、この作品には大人でもにやりとしてしまうようなシーンが随所にある。
ゆえに後半はアクションシーンが多めになるのだが、スクリーン狭しと大暴れする主人公に子供たちの視線は釘付けになるだろう。
大人にはストーリーの進捗がなくだるいのだが、一応、子供向けの映画なので不平を言っても詮無きことである。
後半のアクションシーンは大人には些かだるいが、CGアニメの利点である自由なカメラワークが子供を退屈させない。
それでいてストーリーもけっこう厚みが有り他者を思い遣る感情や助け合う心の大切さも過不足なく教えてくれる。大人も楽しめながら且つ教育的でもある。

アシモフ博士が提唱したロボット三原則を忠実に守るベイマックスだが、彼のいたわりとホスピタリティはラセターが重ねる日本のイメージそのもののように思う。
本作では製作者の日本への親しみと理解が窺えるのだが、これは日本人が平和憲法を誇っていた未だ無垢な時代へのリスペクトであり、このような形で日本へのラブコールを贈られると照れるのだが、以前の日本人が掲げた崇高な理念をきちんと受け取ってくれる人がいたのだと思うと面映ゆい気持ちでいっぱいになる。

本編上映前に6分間の短篇が上映されるのだけれど、犬の視点を通してある恋人たちの人生を描いたもので、それが郷愁を誘ってとても良い。
この短篇は子供を連れて劇場まで来た親御さんのために作られた作品のように思う。じつに情愛こまやかで涙を誘う。これだけでも『ベイマックス』を観に行く価値はあるだろう。

子供には夢と優しさを、大人には遠い過去に置いてきた忘れものをベイマックスは届けてくれることだろう。

青森 学

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