ヘルプ 心がつなぐストーリー - 樺沢 紫苑

さすがはエンタメの作り方がうまい、ハリウッド映画という感じです。(点数 90点)


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アカデミー賞でオクタビア・スペンサーが助演女優賞を受賞した
『ヘルプ 心がつなぐストーリー』。

 アカデミー授賞式の時から気になっていたのですが、
ようやく見に行きました。

 作品は素晴らしいのですが、日本語タイトルが良くないと思います。
 何の映画か、全くイメージできないので。

 「ヘルプ」って何のことだろうと思ったら、
「お手伝いさん」つまり、「家政婦」「メイド」という意味の
「help」だったのですね。
 一言で言えば「家政婦は見た」のアメリカ版であり人種差別版なのです。

 人種差別の激しい1960年代の米ミシシッピ州ジャクソン。
 そこで働くメイドたちの物語。
 
 映像は明るく、裕福な家庭の華やかな生活を映しだしますが、
上品な奥様方が口にする差別的な言葉が、
その見かけとのギャップで、グサグサと刺さってきます。

 この映画の時代背景は、1960年代。
 たかだか50年前で、丁度、私が生まれた頃のことです。
 
 そんな最近のアメリカで、ここまで凄まじい人種差別が
平然と行われていた、ということがある意味ショッキング。

 アメリカ公民権運動を描いた作品としては、
『ミシシッピー・バーニング』『マルコムX』などの
傑作がありますが、これらの映画を見ても
意外と普通の黒人労働者がどれだけひどい
人種差別を受けていたのか、というは伝わらなかったりします。

 庶民目線で黒人差別を描いた作品としては、
『ドライビング Miss デイジー』で黒人のドライバーの目線で描いた
作品がありますが、この作品では主人であるデイジーはユダヤ人という設定で、
被差別者であるユダヤ人と黒人のつながりを描いた作品で、
かなり特殊な映画と言えます。

 そう考えると、ミシシッピなどの南部を舞台に
ごく普通の黒人労働者の差別的な扱いを受けてきた
日常をリアルに描いた映画というのが、
実はほとんどなかったということに、まず驚きます。
 どうみてもありそうなのに、ほとんどないのです。

 まあ話は難しくなりましたが、物語は虐げられてきた家政婦たちが、
自らの体験を語り始め、それが本として出版されるまでを描いた
ヒューマンストーリーで、歴史的背景を知らなくても、
素直に感動し、涙が流れます。

 白人の子供を赤ん坊の頃から、母親がわりとなって育てる黒人のメイド。
 子供が黒人のメイドに母親以上の愛着が生まれていくシーンは感動します。

 こうした南部の金持ちたちは、
黒人メイドに育てられているにも関わらず、
彼らが大人に育ったときは、
黒人に対して差別的に接します。
 差別の連鎖を繰り返しです。

 これだけへビーなテーマを扱っていながら、
随所に「笑い」が入って、見ていて気分が重くなりません。
 
 さすがはエンタメの作り方がうまい、ハリウッド映画という感じです。

 この映画を見て、南部の黒人たちの間でゴスペルが流行った理由が、
初めてわかりました。
 
 日々、差別を受け抑圧されている彼らにとって、
日曜日の教会でゴスペルを歌う時だけが、
唯一の発散、気分転換の瞬間なのだ、
ということを感覚的に理解します。

 この辺のアメリカの歴史や人種問題に関心のある人にとっては、
相当に興味深い映画でありますが、
仮にそうした背景を全く知らなかったとしても、
「こういう時代もあったのか」とゼロから学んでいただける。
 非常に深い映画だと思います。

樺沢 紫苑

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