ヘアスプレー - 福本次郎

◆ブロンドで青い目の白人が手足をキュートに振って踊り、その一方、まだまだ黒人は2級市民として扱われている。チビでデブの白人少女がダンサーになる夢を追いかける過程を通じて、人間を見かけで判断することの無益さを訴える。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 細密に再現された60年代のファッションやダンス、そして人々の考え方。ブロンドで青い目の若い白人男女が手足をキュートに振って踊り、ヘアはばっちりと固めている。その一方、まだまだ黒人は2級市民として扱われ、同じフロアで踊ることは許されず、高校の教室も別々。舞台となったボルチモアは当時の平均的な米国の都市なのだろう。そこにも人種差別反対の波が押し寄せ、やがてその勢いは止められなくなる。明るく前向きだがチビでデブの白人少女がダンサーになる夢を追いかける過程を通じて、人間を見かけで判断することの無益さを訴える。

 ミュージカル番組のキャストになるのが夢のトレーシーはその体重にもめげず、いつも歌って踊っている。オーディションを受ける決心をした彼女は黒人クラスで新しいステップを学ぶうちに、彼らと心を交わすようになる。

 まるで40年以上前に作られたミュージカルといっても通用するくらいに、カラフルな色彩に当時の雰囲気が漂っている。モノトーンは少なく、肥満体のトレイシーや彼女の母まで派手なカラーやパターンを上手に着こなすさまは、まだまだ米国が世界の中心だったころの証。黒人の地位も向上し始め、白人の側に彼らを受け入れる準備ができつつある。しかし、どうして今この時代を扱うのだろう。62年の出来事を通じて、現代社会への問題提起や訴えかけるものが何も感じられないのだ。強いて言えば、デブ好きの男は昔からいたということだろうか。

 トレーシーは黒人のデモに参加し、警官を殴ったことから指名手配を受けるが、仲間の助けでコンテスト会場に潜り込む。そこで人種差別を撤廃させるのだが、なぜか優勝はトレイシーではなく黒人少女。ラストはお約束どおり、白人黒人老若男女入り乱れて大ダンスパーティーになるのだが、デブのヒロインにもトラボルタ扮する超デブの母親にも、最後まで踊る姿には共感できなかった。。。

福本次郎

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