プロヴァンスの贈りもの - 福本次郎

◆仕事に追われ心をすり減らしていた男が農村のスローライフに触れ生き方を変える。手垢の付いたような物語には新鮮味はなく、予想通りに展開し予想通りの結末を迎える。人口甘味料を使った安物ワインのような味わいの映画だ。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 仕事に追われ心をすり減らしていた男が、ふとしたきっかけで農村のスローライフに触れ生き方を変える。当然地元で知り合った娘と恋人になる。そんな手垢の付いたような物語には新鮮味はなく、予想通りに展開し予想通りの結末を迎える。主人公の周りのフランス人は皆流暢に英語を話すのもお約束。しかも舞台はワインの産地なのに、主人公はワイン音痴というチグハグさ。幻のハウスワインを巡る伝説にも踏み込みが足らず、映画の甘ったるい味わいは人口甘味料を使った安物ワインのようだ。

 ロンドンの辣腕トレーダー・マックスはおじの遺産であるワイナリーを屋敷付きで相続する。早速売却手続きにプロヴァンスに行くが、ファニーという女性と知り合い魅かれていく。やがてマックスは、ワイナリーでおじと過ごした少年時代に思いを馳せていく。

 語り口はあくまで軽く、コミカルなタッチとテンポのよさは、確かに退屈はさせない。陰鬱なロンドンと陽光あふれる南仏の対比、プールやラケットなど少年時代の思い出が詰まった小道具、おじがマックスに残した人生訓、男と女のサイテーの出会い、そしてデートで見る映画と雨。そういった映画的な要素のちりばめ方は非常に洗練されていそつがない。しかし、どれもこれもどこかで見たようなシーンをつなぎ合わせた予定調和的なものばかりだ。

 せめてマックスがロンドンでの富をすべて失うとかファニーにフラれるとかするなど、今までの人生のしっぺ返しを受けなければ、彼の南仏生活はただ都会に飽きた金持ちの気まぐれにしか見えないではないか。何かを大切なものを失うから新たに大切なものを手に入れることができるのだ。それを八方丸く収まりましたでは、工夫がなさ過ぎる。リドリー・スコットもラッセル・クロウもアメリカ人ではないのに、結局、この映画はハリウッド的な価値観を押し付けているだけ。ファニーのレストランにやってきた米国人観光客と同じことを彼らがやっているのだということを気づくべきだろう。

福本次郎

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