プロミスト・ランド - 青森 学

この映画のなかで描かれる騒動は対岸の火事ではなく、どの国、どの地域にも当て嵌まる根源的な問題が含まれている。(点数 85点)


(C) 2012 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

シェールガスは第3のエネルギー革命と呼ばれ、エネルギー供給の勢力図を塗り替える画期的なものだが、エネルギー供給を外部に頼っていた国が一転主要資源国になる変化が国内に様々な対立をもたらすことがある。

この映画はそんなシェールガス掘削の対象になった小さな田舎町に湧き上るエネルギー騒動を描いているのだが、貧困に喘ぐ町の救済策になるかそうでないのか住民を挙げての論争に発展する。
シェールガス掘削において、住民は金銭的に豊かになるものの採掘に伴う環境破壊をリスクとして引き受けるか、あるいは今までと変わりなく補助金漬けの貧しい生活に甘んじるのか二者択一を迫られる。
だが、どちらに転んだにせよ明るい未来が約束されているとはとても言えない。
住民は貧困の中にいても土地の景観・自然を愛している。子孫に残すのはこの自然であると言い切る者も居る。
一方で我が子を大学にやるだけの教育資金が無い家庭はグローバル社に採掘権を売ってしまう。
そこには苦渋の決断を迫られる人々の動揺が描かれている。

この作品はシェールガス採掘で狂奔する人たちに自助独立の精神を思い出してもらおうとする製作者の訴えが分かるドラマだ。
それはラストのマット・デイモンの独演で判るのだが、シェールガスラッシュというべき再び巡ってきたゴールドラッシュに自分を見失わないでしっかり足元を見て歩みましょうというマット・デイモンのメッセージが籠められている。
結局、”自助独立”というメッセージはアメリカの建国理念に立ち返ることでしか現況を打破できないという結論で真っ当すぎて新味さに欠けるのだが、それだけアメリカは原点に立ち戻ることで何度も自己承認を繰り返しているのだろう。
またそれがハリウッド映画なのである。

主人公が働くグローバル社はアメリカのグローバル化批判を分かりやすくしたもの。
グローバリズムに対する反感がこの作品に充満している。ビラや看板に「GLOBAL GO  HOME!」と書かれているのはそのままグロバリゼーションに対するアレルギーの表明である。

”プロミスト・ランド”とは清教徒が移住を決意した”約束の地”のことであり、製作者はその精神を忘れないためにこの言葉を用いたように思う。
つまりシェールガスラッシュに狂奔する人たちに原点回帰を促す言葉なのである。

この映画にはどんでん返しがあるのでそこがこの作品を一層楽しめるものにしているのだが、種を明かすとぶちこわしてしまうので、大企業の人心掌握術は恐ろしいとだけ付け加えておこう。

青森 学

【おすすめサイト】