ミュージカル「コーラスライン」のオーディションに集まったダンサーたちの8ヶ月に渡る長いチャレンジをカメラは追う。3000人にも及ぶ参加者から最終合格者を絞る過程で、登場するあらゆる人びとの人生が浮き彫りにされていく。(50点)
ミュージカルのオーディションに集まったダンサーたちに自らを語らせたミュージカル「コーラスライン」。そのオーディションに集まったダンサーたちの8ヶ月に渡る長いチャレンジをカメラは追う。彼らが得ようとする役柄は、スターを夢見て苦しい生活や厳しいレッスンに耐えてきた自分自身と重なるところも多いはず。だからこそ、与えられたセリフや振り付けだけでなく、いままでにどういう半生を辿ってきたかが審査のポイントになってくる。3000人にも及ぶオーディション参加者から最終合格者を絞る過程で、そこに登場するあらゆる人びとの人生が浮き彫りにされていく。
1974年、NYで上演された「コーラスライン」は大ヒット、それはマイケル・ベネットという天才的なダンサー・振付師が録音したテープにヒントを得たものだった。2004年、16年ぶりの再演のために新たなキャストのオーディションが始まる。
数多くのダンサーたちの中からどういう基準でレンズを向ける対象を選んだのだろうか。映画として成立させるには、撮影したダンサーが少なくとも最終選考にまで残らなければならない。おそらく、フィルムに収めたものの、早々と落選した者も多かっただろう。その無駄になった膨大な量のフィルムと時間の量だけ、残された映像に登場するダンサーたちは強烈な輝きを放つ。それは鍛え上げられた肉体だけでなく、精神的にもどれだけ強靭なものを持っているかの戦い。踊ること、演じることが、生きることと同義であると言い切れる者だけが選ばれるのだ。
ただ、アーカイブ映像はともかく、現代のオーディションの撮り方の雑さが目に付いた。粒子の粗いざらついた映像は非常に見づらく、とてもプロのカメラマンの手によるものとは思えない。室内での撮影が多く、光量が足りないのは分るが、DVカメラを使えばもう少し何とかなったはず。テレビ向けに作られたのかもしれないが、デジタル放送ではこれでも通用しないはずだ。
(福本次郎)