ブラッド・ダイヤモンド - 映画批評なら映画ジャッジ!

◆世界史最上級のタブーに切り込んだ勇気ある一本(85点)
勉強したい2009

 ダイヤモンドという宝石は希少で高価かつ透明に輝くピュアなイメージで、世界中の女性の憧れとされてきた。しかしその一方、採掘現場では奴隷同然の過酷な労働がまかり通っていたり、一部はテロリストたちの資金源でもあるという闇の部分も厳然と存在する。ダイヤモンドの原産地のほとんどで内戦など武力紛争が起きているのは、もちろん偶然ではない。

 成功と美の象徴であると同時に、死と紛争の象徴でもあるこの宝石について、その闇の部分に鋭く切り込んだのがこの『ブラッド・ダイヤモンド』。しかし、マスコミやエンタテイメント業界にとって巨大なスポンサーである宝石業界を敵に回すことは最上級のタブー。はたしてどこまで迫れるか。

 クリントン大統領のスキャンダルが明らかになった90年代、アフリカのシエラレオネ。貧しい猟師ソロモン(ジャイモン・フンスー)の村は反政府過激派のRUF=統一革命戦線に襲われる。家族散り散りとなり、ソロモンは捕らえられ、奴隷としてダイヤモンド採掘場に送られる。なんとしても家族の元へ戻りたい彼は、そこで偶然見つけたおよそ200カラット(おそらく時価数億円)のピンクダイヤの原石を、監視の目を盗んで懐に入れる。

 ひょんなことからこのダイヤの存在を知った密輸商人のアーチャー(レオナルド・ディカプリオ)は、ダイヤと交換に彼の家族を探し出すと申し出る。彼の頭には、そろそろこの世界から足を洗いたいという気持ちがあったのだ。アーチャーは、有能な女ジャーナリスト(ジェニファー・コネリー)にダイヤ密輸のノウハウという特ダネを渡す事と引き換えに、正規の報道パスの力で二人を紛争地から脱出させるよう頼む。

 『ブラッドダイヤモンド』は、ノーテンキに見る娯楽大作とするには少々解説が要る。まず、舞台がなぜシエラレオネかという点だが、これはこの地域が高品質なダイヤ産地であると同時に、漂砂鉱床で採掘が容易という点があげられる。

 つまり、川をザルですくえばたまーにダイヤが引っかかるわけで、だからこそ大規模な施設を持たない(持てない)ゲリラ組織の資金源として狙われるわけだ。よって、冒頭ソロモンが採掘現場へさらわれるシーンにはリアリティがある。と同時に、ここでゲリラたちが他の捕虜に対して行う残虐な行為の数々も、実際にRUFが行った蛮行として有名なものばかりだから、注目してほしい。

 現実にもこの国はアフリカ最大の密輸国となっており、ダイヤを狙う紛争が絶えない。また、世界でもっとも平均寿命の短い国としても知られている。すべては密接につながっている。

 紛争ダイヤはある方法で正規の流通ルートにのり、私たち先進国の消費者の手にわたるわけだが、そうしたショッキングな現実についても映画はきっちりと説明する。世界トップクラスのダイヤ消費国である日本人としては、決して他人事ではない。

 ただし私が一番期待した肝心の部分、すべての利権の背後には先進国の大企業等がいるのだという点については、微妙にぼかして明言を避けている。ただし、わかる人にはわかる形で痛烈に皮肉った部分もある。それは、主人公のレオ様が自分の出身地をローデシアだと語る場面。ローデシアとは今のザンビアとジンバブエのあたりの事だが、なぜ彼はジンバブエといわずにローデシアというのか。そこがポイントだ。

 ローデシアとは、白人たちがローズという男性の名からとって名づけた国名なのだが、このローズとはいったい誰なのかというと、全世界のダイヤモンドの流通を独占するD社(映画の中では仮名が用いられる)の創始者セシル・ローズに他ならない。

 表向きはどうあれ、ブラッドダイヤモンドで一番儲けてるのは誰なのかを、この映画はここでさりげなく匂わせている。ユダヤ系の会社ワーナーブラザーズによる娯楽大作が、ここまでタブーに切り込んだ事には正直びっくり仰天であった。なんといってもD社にせよイスラエルの研磨産業(これも市場独占に近い)にせよ、ダイヤモンド業界はユダヤ最大の牙城なのだから。

 こうした点を念頭に置いて見れば、3人の脱出大冒険を楽しみながらまたひとつ、違った世界が見えてくるかもしれない。たぶん、この映画を見終わってもまだノーテンキにダイヤがほしい?なんておねだりするオンナノコは相当少数派だ。よって、現在銀座のお姉ちゃん等に同様の要求を受けて弱っている男性諸氏は、緊急避難的に本作の上映劇場に連れ込むことをアドバイスしておく。

映画ジャッジ

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