ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない - 佐々木貴之

◆就職活動中の者にはオススメしたい一作(75点)

 残業は当然どころか膨大な仕事量に徹夜残業の連発、安月給、理不尽な社員連中といったマイナス要素がズラリと並ぶブラック会社(ブラック企業とも言う)。不況真っ只中の近年、この手の会社は多く存在し、今後も増加すると言われている。

 日本映画界は、ついにこのブラック会社を取り扱った作品を世に送り出すこととなった。ネット掲示板「2ちゃんねる」(劇中では「Bちゃんねる」)に書き込まれたブラック会社実体験を書籍化した黒井勇人の原作を基に佐藤祐市監督が映像化。

 いじめが原因で高校を中退し、引きこもりのニート生活を送ってきた26歳の真男(小池徹平)は、母の死をきっかけに一念発揮してプログラマーの資格を取得し、就職活動を始める。不況でどこの会社も真男を採用してくれなかったが、黒井システムという会社はあっさりと採用する。真男は初出社日から上司・阿部(品川祐)に怒鳴り散らされ、サービス残業を強いられてしまう。黒井システムは、立派なブラック会社だったのである。

 人気タレントを揃えてブラック会社の実態を鋭く暴いた社会派ドラマだと思えたが、社会派テイストはかなり薄い。ブラック会社の厳しさ、ダルさ、腹立たしさを描く一方で面白可笑しさを押し出し、テンポ良く描いて魅せつけた一級のエンターテイメント作品として仕上がっている。

 まず面白いのは、登場人物だ。仕事もできないクセに偉そぶって暴言を吐き散らすリーダーの阿部を筆頭に、阿部の腰巾着でガンダム大好き野郎の井手(池田鉄洋)、精神的ダメージを相当受けている挙動不審でワキガの上原(中村靖日)、会社のブラック化のタネと言える現場に興味ナシの黒井社長(森本レオ)とその愛人である経理担当の瀬古(千葉雅子)いうクセ者が揃っている。そんな中、田辺誠一扮する藤田は、かなり異色の存在だ。社内では一番まともなのである。ただ真面目なだけでなく、言うことも筋を通す男前の彼は、真男に的確な助言を与える良き理解者でもある。そんな彼が“なぜこのブラック会社で頑張っているのか?”は注目すべきポイントの一つであり、ストーリーが進むにつれてその謎が明かされていく。他にも途中から藤田に惚れ込む恋愛に積極な派遣社員の中西(マイコ)と出世欲の塊で会社をモノにしようと企む木村(田中圭)が加わる。とにかく中西と木村の加入がドラマを更に面白くさせるのである。

 本作が面白いのは、ドラマ部分だけではない。セリフを文字に出してみたり、登場人物を「三国志」になぞらえたモノや無謀な仕事を軍の死の行進(劇中では“デスマ”と呼ぶ)と捉えたモノの映像表現、心の中のもう一人の真男を分身という形で登場させてみたりという具合にアニメやマンガを思わせるような演出がユニークであり、少し風変わりな面白さが味わえる。観る者に印象付けさせるための工夫だと捉えることができる。

 題材は時代に合わせたモノで非常に興味深く、就職活動中の者にはオススメしたい一作だと言いたい。また、現在ブラック会社で苦労して頑張っている方には、本作を観て勇気づけられるのも良しだと思うが、この手の会社に就職しないためのお手本の一つとして活用してみることを大いにオススメしたい。

佐々木貴之

【おすすめサイト】