ブギーマン 死霊の鏡 - 小梶勝男

◆ドイツ・トラッシュ・ムービー界の巨匠、ウーリー・ロメル監督の代表作。スプラッター場面はそれなりだが、意味不明な展開が笑いを誘う(64点)

この映画は劇場未公開映画です。評価の基準は未公開映画に対してのものとなります。

 トラッシュ・ムービーの世界はとても広い。本作は1980年製作のB級ホラーだ。スプラッターともオカルトともつかない作品で、その分野では有名なドイツのウーリー・ロメル監督の代表作である。あるウェブサイトでは最低映画の一つにも挙げられているので、ご存じの方もいるかも知れない。いや、ほとんどの人が知らないだろうし、別に知らなくてもいい。

 本作の何が「最低」と呼ばれる所以なのかというと、ストーリーが意味不明、わけが分からないのである。怪異が起こるのだが、それが常識的な因果関係や作劇上真っ当な展開から外れている。凡作にならずカルト化した理由でもあるので、かえって良かったのかも知れないが・・・・。

 まず、タイトルがよく分からない。ブギーマンは子供をさらう鬼や妖怪の類なのだが、ジョン・カーペンターの「ハロウィン」(1978)がヒットし、その中に出てくる殺人鬼がブギーマンと呼ばれたので、早速いただいたらしい。本作にはブギーマンは一切出てこない。いたずら好きな子供が「ブギーマンだ!」と叫ぶ場面があるだけだ。

 主人公はレイシー(スザンナ・ラブ)とその弟(DVDジャケットには弟と書いてあるが、兄かも知れない。字幕では「兄」となっている部分もある。英語ではどちらもブラザーなので分からない。ここではジャケットの解説文に合わせて弟としておく)ウィリー。2人の幼いころから物語が始まる。父親が出ていってしまったので、母親は男を連れ込んでいちゃいちゃしている。それを姉弟が覗いてしまう。姉は叱られただけで済んだが、弟はベッドに手足を縛られて、男に殴られる。完全に児童虐待だ。姉は包丁を持ち出して弟を縛った縄を切って助けるのだが、その包丁で弟は母親とセックスの最中の男を殺してしまう。まあ子供が家族を殺すという設定だけは「ハロウィン」と共通していなくもない。

 それから20年後、殺された男が悪霊となって鏡の中で復活し、次々と殺人を始める。

 こう書くと、当然「男」は恨みのある姉弟を襲うと思うだろうが、なぜかそうではない。とにかく近くにいる人間を手当たり次第に殺すのである。

 安っぽいシンセサイザー(オルガン?)がジャーンと鳴って、鏡の破片が赤く光る。この破片の近くにいたり、破片に反射した光を浴びた人が殺される。その「法則」は、分かるようで分からない。

 スプラッター場面は今見ると大したことはないが、それなりに悪くない。女性が自分の喉をハサミで突いたり、子供が窓に首を挟まれて死んだり。青年の首の後ろから長い針のようなドライバーが刺さって先端が口から突き出て、それが恋人の口に突き刺さり、「串刺しキス」になるという、洒落た?殺人場面もある。

 殺された男の霊は、本当は姉弟を襲いたいのだと思うが、周囲の人間ばかりを殺していく。それも、鍬やナイフが独りでにフワーっと浮いて襲いかかるという間抜けさ。残虐場面にもかかわらず笑ってしまう。

 とにかくいろいろな突っ込み所がありすぎて、もはや楽しむしかない。この手の映画が好きな人だけにしかお薦めはしないが、それほど退屈もしなかった。

 よく分からない催眠術(?)の先生役でジョン・キャラダインが出演している。主演のスザンナ・ラブは、ロメル監督の当時の奥さんだったらしいが、なかなか可愛い。どうでもいいが、名前に「ラブ」と付いているのが、ポルノ女優みたいでいい。70~80年代のポルノ女優って、ベロニカ・ハート、アネット・ヘブン、モニカ・スイートハート、ナターシャ・ナイスなど、「ハート」「ヘブン」「スイートハート」「ナイス」と見も蓋もない名前が付いていた。まあ「ヘブン」も「ハート」も「天国」「心」とは綴りが違うのだが、カタカナ表記でしか見ていないから分からなかった。ほとんどが芸名(源氏名?)みたいなものだろうが、当時は本名だと思っていて、「何でポルノ女優に限ってこんなに優しい名前が多いのだろう」と、何故か悲しくなったものだった。

小梶勝男

【おすすめサイト】