フローズン・リバー - 佐々木貴之

◆人種、移民、貧困といったアメリカ社会の影の部分を描いている(80点)

 2008年度サンダンス映画祭のグランプリをはじめ、数々の賞を受賞した実話に基づいた社会派ヒューマン・サスペンスドラマ。監督を務めたのは、本作が長編デビュー作となるコートニー・ハント。

 カナダ国境に近いニューヨーク州最北部の町は、先住民モホーク族の保留地を抱えている。1ドル・ショップ勤務で15歳と5歳の二人の息子を持つレイ (メリッサ・レオ)は、ギャンブル野郎の夫に新居購入費用を持ち逃げされたため、生活面が相当苦しい状態。ある日、レイは資金を工面するため、ひょんなトラブルで知り合ったモホーク族の女ライラ(ミスティ・アッパム)とともに不法移民を密入国させる裏稼業に手を染めてしまい……。

 二人の主人公レイとライラは厳しい状況に置かれた母親であり、そんな二人が家族のことを思って罪を犯していく。だから、この模様を極悪丸出しで描いてはいない。あくまでも二人の厳しい状況があっての悪事として淡々と描く。この描写からは、家族を思う母親の強さすら感じられる。そして、ほのかな緊迫感を張り巡らせてサスペンスタッチで魅せている点も面白さの一つだと言える。レイとライラの関係も序盤では険悪だったが、徐々に友情を築き上げていくが、これが非常に好ましい。

 また、人種、移民、貧困といったアメリカ社会の影の部分を描いている点も特徴的であると同時に注目すべきポイントでもある。しかし、これらの問題をムキになって押し付けがましく魅せつけたり、厳しさを強調しすぎたりすることなくあっさりと描いている点も良い。それでも、ライラのトレーラーハウスでの生活、レイと息子二人の食事がポップコーンだけという貧しさはじっくりと伝わってくる。

 舞台となる町全体の景観も非常に印象深い。決して好印象とは言い難いが、インパクトが強くて味わい深さがある。一面に雪が積もっており、空模様は曇っている。明るさは皆無と言い切って良い。この映像から感じられる暗くて冷ややかなムードがレイとライラの厳しい状況とよくマッチしていると言っても良いほどだ。

 本作の印象深いシーンを一つ挙げてみる。レイとライラがパキスタン人夫婦を密入国させるが、その際に「この夫婦はテロリストで持っているバッグの中身は爆弾だ!」と思って雪道に捨ててしまう。密入国を成功させたとき、「バッグの中には赤ん坊が!」と言われ、逮捕されたり車が雪道に埋まってしまうかも?! といったハイリスクを背負い込みながらも元の場所に戻る。そして、無事にバッグの中の赤ん坊を保護するが、果たして赤ん坊は助かるのか?! このドラマの最大の見所だと言い切れる。そして、一番印象深くて良いイメージを与える名シーンでもある。

 先述したように数々の賞を受賞した良作にも関わらず、日本では劇場公開が難しいと思われていた。だが、ある劇場が買い付けたことによって公開が実現した。また、公開中にオンデマンド放映という新たな試みにも挑戦した。このような観点から考えてみると、本作は伝説的な良作として後々語り継がれていくと思う。

 とにかく地味なインディーズ作品だからと言って簡単に侮ってはならない貴重な作品だ。観る価値は当然大だ!!

佐々木貴之

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