フランケンウィニー - 青森 学

白黒の映画にバートン監督の色褪せない想い出が詰まっている。(点数 88点)


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愛するものに永遠に生きて欲しいと願うのはだれにでもあることだと思う。
鉄腕アトムはこのフランケンシュタインのストーリーと共通するテーマがある。天馬博士は息子の飛雄を交通事故で失い、その代わりとしてアトムを造った。
ピグマリオンも彫像に恋をして哀れに思ったアフロディーテがその像に魂を吹き込んだのだという。

このように、生命→死という本来不可逆な事実を敢えて逆行しようとする試みは始皇帝が不老長寿の薬を求めて蓬莱山を探したエピソードだけでなく、古今東西の小説、映画の不滅のテーマになっていることはいうまでもない。
監督は幼少の頃犬を飼っていたそうで、その想い出を犬と共有し、そして、その親友を喪った経験がこの映画に色濃く反映されているとのことだった。

冥界から復活したゾンビ犬のことスパーキーがフランケンシュタインの怪物のようにつぎはぎだらけだけれど、温厚な普通の犬として蘇生したのに比べ、クラスメイトに脅迫されて蘇生実験をした金魚はスパーキーのようにはならなかったことを理科教師のジクルスキ先生はこう解説する。
「そこには愛情という変数が無かった」と。論理的な実験において愛情という実定不可能なものを検証の値として引き受けることに強い違和感があったのだが、これはバートン監督が理詰めでものを考えるよりも直感で答えを出すタイプのアーティストであるからのように思う。これは監督の持ち味と好意的に解釈したほうが良さそうか。

ジグルスキ先生が東欧訛りの英語を話すという設定は、この声を担当したマーティン・ランドーが同監督の『エド・ウッド』でハンガリー出身のベラ・ルゴシを演じた経験が活きているように思う。
“自分の故郷では配管工だってノーベル賞を獲る”とジグルスキ先生が言っていたのはおそらくポーランドのワレサ元大統領のことだと思う。
ワレサ氏は電気技師とWikipediaには記述されていたが、自分の記憶では当時、彼を紹介したニュースでは配管工と記していたような気がする。
セリフの文脈では自然科学の分野においてのノーベル賞のことを指していると思うが、たぶん意図的に“平和賞”であることを伏せて唯、ノーベル賞とだけ言ったように見えた。

少年と犬との友情が愛くるしくて、少年に懐く犬の描写が濃やかでバートン監督の飼い犬との思い出がいかに素晴らしいものか偲ばせる作品だった。
また、東宝系怪獣映画へのオマージュが有り監督の日本贔屓に少し嬉しくなる。
そして、へんに教訓じみたラストにしないところも良い。
映像はモノクロだが、心に残る憧憬はきっと総天然色に彩られることだろう。

青森 学

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