ホラーの定石を実践する見事な演出だった。(点数 60点)
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ガラス片、蛍光灯、ヤカン・・・・・小道具が客席に飛び出してくる
オープニングは、この作品で扱う素材が3Dという表現法と抜群の親和
性を持つことを饒舌に物語る。それは銃弾や矢といった非日常の武器
ではなく、身辺にあるありふれたものが突然凶器となって襲いかかっ
てくる恐怖。今回もスリル満載のアイデアに最後まで息の詰まる思い
だった。
【ネタバレ注意】
研修旅行に向かうバスでつり橋が崩落するビジョンを見たサムは、同
僚に退避を呼びかける。何とか8人が転落から逃れるが、しばらくして
生存者が次々と不可解な死を遂げていく。
工事中の橋にひびが入り、ワイヤロープが切れ、コンクリートが崩れ、
溶けだしたアスファルトが流れだし、手すりが湾曲する。巨大なつり
橋が少しずつ壊れるたびに人が落命していくシーンの時間的な広がり
はまさに現場を体験しているよう。先に死んだ者を見送りながら、次
は自分かとおびえながら逃げる、そんな登場人物の感情がリアルだ。
また、体操選手が事故死する場面では、水滴やネジ、コードなどが非
常に意味ありげに描かれる。いつ彼女がそれらの“危険を知らせるア
イテム”に触れるのか観客に予想させハラハラさせておいて想定外の
不意打ちを食らわせる手法も健在。凄惨な絶命シーンの連続は、スク
リーンから顔を背けたくなるけれど目は離せない、ホラーの定石を実
践する見事な演出だった。
(福本次郎)