ピラミッドの謎から超古代文明の存在を示唆するドキュメンタリー。内容は興味深いが、映像は付け足しで、これなら本で読めば十分(点数 40点)
エジプト・ギザの大ピラミッドに関するこれまでの「定説」を覆し、高度な科学力を持った古代文明の存在を示唆するフランス製ドキュメンタリー。
ピラミッドは本当に国王の墓なのか。
建設期間は20年といわれるが、未発達な工具でそんなに短期間での建設は可能だったのか。
石の積み方がなぜこれほど不規則で、しかも精度が高いのか。
円周率や黄金数に正確に基づくデザインは、なぜ可能だったのか。
確かにピラミッドに関しては、従来の定説では説明できない謎が多く存在する。
映画はそれを、一人称のナレーションで、各分野の専門家へのインタビューを交えながら、一つひとつ検証していく。
監督はパトリス・プーヤール。嘘か本当か、37年間にわたる調査と研究、6年間の検証によって製作されたという。
オカルト雑誌「ムー」に親しんできた人ならば、これらの謎はどこかで目にしたことがあるだろう。
実際、今月号(2011年2月号)の「ムー」はこの映画を大特集している。「ムー」の読者には必見の作品だろう。
展開されているのは、いわゆる「トンデモ学説」といわれるものだ。
しかし、本作は、トンデモ学説を展開しながら、「トンデモ」と思われないよう慎重に論を進めている。定説を唱える専門家を何度も登場させ、高度な古代文明の存在などについて、繰り返し否定させている。
そして、それでも否定できないものを積み重ねて、断定を避けつつ、謎解きを進めていく。
論としては面白いし、意外に説得力がある。マニア層だけでなく、一般の観客にも納得できる説明になっていると思う。
だが、そうした説明が先で、説明に合う映像を後から付けているだけなので、映画としては物足りない。同じ映像が何度も使われ、時には文字(テロップ)が大写しになる。そうした手法はテレビのミステリー番組でよく使われるが、映画として見ると安っぽいと言わざるを得ない。
もちろん、様々な古代の遺跡や、ピラミッドの内部を映した映像など、面白い場面もあるが、基本的には映像を見せるためのドキュメンタリーではない。
映像で見た方が理解しやすい部分もあるが、円周率や黄金数を説明する場面などは、映画では分かりにくく、むしろ書物の方がふさわしいとも思った。
内容は興味深いが、思い切ってフィクションとして描くなど、映画にするならもっと別の方法があるのではないか。
(小梶勝男)