ビルと動物園 - 佐々木貴之

◆淡い恋愛のイメージを巧く表現(65点)

 大企業のOL・香子(坂井真紀)と、その会社の窓拭きバイトをやっている音大生・慎(小林且弥)。慎のバイト先の先輩・一太(山口祥行)は、慎が香子に興味を示していることを知るや無理矢理に二人を繋ぎ合わせた。その後、香子と慎は飲み屋や動物園に行ったりとデートを重ねていくが……。

 29歳独身女と21歳の男子学生の微妙な恋愛模様を殆ど静寂なタッチで描き、淡い恋愛のイメージを巧く表現できている。なおかつリアリティーを追求し、シンプルな形でまとめ上げている。主人公二人や周囲の人々の姿、出来事はまさに現実的で共感を抱く方もいるだろう。

 香子が様々な日常のマイナスな出来事に疲れ、葛藤する様子が坂井の表情等からしっかりと伺え、その自然体の演技が抜群に素晴らしい。小林且弥の如何にも好青年という感じのキャラクターも親しみ易い。脇を固めるのは山口祥行、勝村政信、渡辺哲、河原さぶ、バナナマンの日村勇紀といったこれまた異色の面子だ。特にイケイケで面白可笑しさを存分に発揮させる山口、少ない出番ではあるもののしっかりと笑わせてくれる日村といった存在は、地味過ぎた作品にしないための要員のように思えるが、観る者に面白く思わせるための存在としては十分に良い。この二人以外のキャラクターも設定がしっかりと成されているため印象に残るキャラクターが結構多い。

 人生において前向きに進むことの大切さを教えてくれる良作だ。自身の将来について真剣に向きあっている方には息抜きの一つとして本作を鑑賞し、香子や慎の姿を参考にしてみても良いだろう。香子の父・史郎が発する娘に対する激励の一言に勇気づけられるのも良いかも……。

佐々木貴之

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