ヒックとドラゴン - 町田敦夫

ヒックとドラゴン

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◆年齢層に応じて楽しめる感動の3Dアニメ(70点)

 『シュレック』や『マダガスカル』で知られるドリームワークス・アニメーションの最新作。バイキングとドラゴンが壮絶な戦いを繰り広げていた時代を舞台に、マッチョなバイキング文化から浮きまくりの少年と、傷ついて飛べなくなったドラゴンとの、心温まる交流と冒険が描かれる。

 いつものようにドラゴンに襲撃されたバイキングの村。族長の息子なのに戦いがからっきし苦手なヒックは、自作の飛び道具をまぐれ当たりさせ、伝説のドラゴンを撃ち落とす。これで汚名を返上できると1度は喜んだヒックだったが、飛べなくなったドラゴンにとどめを刺せず、トゥースと名付けたそのドラゴンと密かに友情をはぐくむことに。しかしヒックがピンチに陥ったとき、トゥースが仲間たちの前に姿を現してしまい……。

 ヒックがおかしな新兵器を繰り出す冒頭部では、てっきりティンカーベルのような「ものづくり」の天才のお話かと思ったのだが、どっこい、ヒックにはもっと高い次元の取り得があった。それは自分と異なる者を偏見なく受け入れる包容力であり、他者の命を奪うことを恐れる「強さ」。共同で監督・脚本をこなしたクリス・サンダースとディーン・デュボアは、弱虫な(はずの)少年と、残忍な(はずの)ドラゴンが少しずつ距離を詰めていくプロセスを、ユーモラスに、また丁寧に描写した。ヒックがおずおずと差しだした手にトゥースがそっと鼻先を寄せるシーンなどは、『ET』の“指タッチ”にも劣らぬ名場面だと言っていい。

 だが本作は、「ナンバーワンよりオンリーワンを目指そうよ」というふやけたメッセージを伝える凡作でもない。トゥースとの触れ合いを通してドラゴンの習性を学んだヒックは、一躍バイキング学校の優等生になり、ひいては村の運命をも変えていく。悩み多き思春期の観客は、自信を持つことの大切さを、勇気の真の意味を、周囲の環境になじめないときの心の持ち方を、この作品から学ぶだろう。

 一方、もっと若い観客は、3Dの特性を生かしたダイナミックな映像に目を見張るはず。とりわけヒックの作った「人工尾びれ」でトゥースが再び空を舞うシーンは必見だ。アングルと距離を自在に変えるカメラワーク、飛び去る雲や岩が生みだす疾走感。落下シーンや戦闘シーンにも、思わず手に汗握るほどの迫力がある。

 100%ハッピーではないエンディングの味わいもまた格別だ。そのアンハッピーがヒックとトゥースの距離をさらに近づけ、観る者に不思議な感動と余韻を残す。優れた児童文学と同様、若い観客が何年か後にもう1度観れば、必ず新たな発見がありそうな1本。様々な年齢層の子供(と大人)たちにお薦めしたい。

町田敦夫

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