ヒックとドラゴン - 福本次郎

ヒックとドラゴン

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◆少しの勇気と誠意を持ってコミュニケーションを取ればきっとわかりあえる。映画はバイキングの少年とドラゴンの交流を通じて、己の論理を相手に押しつけるのではなく、お互いが幸せになる道を探り合うことの大切さを描く。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 倒すべき敵として憎んでいたのに、傷ついて心細そうにしている。話が通じないと思っていたのに、相手も同じ思いを抱いている。心を持つ者同士なら、少しの勇気と誠意を持ってコミュニケーションを取ればきっとわかりあえる、そんな願いが作品からにじみ出る。重要なのは相手を思いやる気持ち、そして本当に闘うべき相手を見きわめることなのだ。映画はバイキングの少年とドラゴンの交流を通じて、己の論理を相手に押しつけるのではなく、お互いが幸せになるような道を探り合うことの大切さを描く。

 族長の息子・ヒックはひ弱だが、一人前の戦士になるためにドラゴンの襲撃から村を守ろうとする。ある日、自作の投石機で撃墜し、飛べなくなったドラゴンを森の奥で発見、トゥースと名付けて世話をする。いつしか友情が生まれ、トゥースはヒックを背中に乗せて空を飛ぶようになる。

 一方で村の戦士たちはドラゴンの巣をせん滅しようと遠征、残った子供たちにも戦闘トレーニングを積ませる。その際、ヒックは武器を手にしてドラゴンと闘うのではなく、トゥースから学んだ方法でドラゴンを手なづける。武力に頼っても恐怖と憎悪しか生まないが、やさしくすれば耳を貸してくれるという、動物を扱う上での基本的なルールをヒックは実践していく。ドラゴンたちも人間よりも、自分たちを奴隷のようにこき使う巨大な女王ドラゴンこそ真の敵であると気づく。

 めくるめくような3Dで再現された、ヒックが背中にまたがってトゥースを見事に御する飛行シーンは、圧倒的な立体感と臨場感とスピード感をもってスクリーンから客席に飛び出してくる。さらに細密に表現されたドラゴンの造形や登場人物の豊かなヒゲまで最新のCGで処理された映像のディテールが目を見張る。ただ、クライマックスで、ドラゴンの女王を見つけたバイキングたちはそれに集中攻撃をかけるのだが、他のドラゴンは女王を守ろうとせず、むしろバイキングを女王の専横からの解放者のように迎え入れる。「独裁国家から民衆を解放する米国」という構図を見ているような気になった。。。

福本次郎

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