◆南の島にやってきたカップルが猟奇殺人のニュースを聞いて、襲われるのではと疑心暗鬼になっていく。出会う人々がみな凶悪に見え些細なことに過剰反応する、そんな不安にさいなまれる心理描写は追い込まれるような緊張感だ。(40点)
緑だけでなくオレンジ色も濃い深い自然が残る南の島。そこに新婚旅行にやってきたカップルが猟奇殺人のニュースを聞いて、自分たちも襲われるのではないかと疑心暗鬼になっていく。出会う人々がみな凶悪に見え些細なことに過剰反応する、そんな不安にさいなまれる心理描写はじわじわと追い込まれるような緊張感。そして、いきなり転調し、見る者の予想を覆すためだけに考えられた仕掛けには、思わずイスからずり落ちそうな衝撃を受ける。
ハワイ・カウアイ島にトレッキングに来たクリフとシドニーは、途中でクレアとケイルという夫婦と出会うが険悪になる。その後、元軍人のニックとその恋人・とジーナと合流し道中を共にする。そんな時、オアフ島で起きたカップル惨殺事件の犯人がカウアイ島に上陸したというニュースを知る。
いかにもインテリ風のクリフと無邪気なシドニーの周辺に、屈強なニック、悪党面のケイルを配置して、物語は彼らの中に殺人犯が紛れ込んでいると思わせる。映画は前半から中盤にかけて、クリフとシドニーの視点で描かれるため、善良な市民のように振る舞う彼らがどういう形で危機に瀕していくのかが興味の対象となる。胡散臭そうなケイルとクレア、ホラとしか思えない冒険譚ばかり口にするニック。クリフから見れば他の二人との間には肉体的に圧倒的なハンディがあり、ただ、山道を進み野営しハンティングするだけなのに、神経症のようにテンションが上がっていく。
映像だけを見ていれば前半部分にもあちこち伏線が張ってあり、先入観で物事を判断してしまうことがいかに危険かを警告しているともとれる。しかし、効果音や音楽は明らかにクリフたちが巻き込まれた部外者であるとミスリードするのが目的。この作品のようなどんでん返しを見せるのならば、観客に代わって現場を体験する語り部となる登場人物を用意すべきだろう。語り部自身が観客との信頼関係を裏切る脚本では、思い付きのご都合主義と取られても仕方あるまい。。。
(福本次郎)