パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 - 渡まち子

◆パーシーがその手で操る水の動きは激しくも洗練されていて、高度なCGによる描写はさすがのひと言(60点)

 現代のNYにギリシャの神々が現れる奇想天外なファンタジー。落ちこぼれの高校生パーシー・ジャクソンは、ある日突然、自分はギリシャ神話の神ポセイドンの息子であることを告げられる。神と人間の子であるデミゴットである彼は、仲間のアナベスとグローバーと共に、万能の神ゼウスのもとから盗まれた最強の武器・稲妻を探す旅に出る。この稲妻がみつからなければ神々の間で戦争が起きてしまうのだ。だが泥棒の濡れ衣を着せられたパーシーの前には数多くの危険が待ち受けていた…。

 ギリシャ神話の神々は役割や性格が非常に人間臭いのが特徴で、神様同士で争ったり、恋愛したり、取引したりと、人間関係(神関係というべき?)が複雑だ。この神同士の愛憎のとばっちりを受けるのが子供たち。ゼウスとポセイドンも兄弟なのにいがみ合っている。このことが稲妻紛失事件の発端のひとつになるのだが、ギリシャ神話に詳しい人なら、それを盗んだ犯人はすぐに目星がついてしまうはず。というのも、神々は、それぞれ守護の役割があり、たとえばパーシーの父ポセイドンは海の神、アナベスの母アテナは知恵と戦いの神といった具合。そしてそこには泥棒の神もちゃんといるのだ。まぁ、それはさておき、パーシーら3人の旅はまるでティーン向け青春映画のよう。ドラッグの誘惑に負けそうになり、妖艶な美人に出会うその旅は、危険な冒険ながらあくまで陽気である。物語は神話に添いながらも随所に現代的なアイテムが紛れ込んでいるのが上手い。例えば毒蛇の髪を持つメドゥーサの姿を iPhone で覗いたり、ハリウッドの看板の横に地獄への入り口があったり、遠い神話の世界と現代がミックスされていることで主人公の冒険に感情移入しやすくなる。

 稲妻泥棒の正体が分かり、海の神ポセイドンの息子パーシーが秘めた力をみせる終盤の対決は大迫力だ。パーシーがその手で操る水の動きは激しくも洗練されていて、高度なCGによる描写はさすがのひと言。父の不在に対する不満と不安という、アメリカの今の現状もサラリと盛り込んで、ライト感覚で楽しめるファンタジーになっている。パーシーを演じるローガン・ラーマンは秀作「3時10分、決断のとき」でも光っていた若手俳優。素直そうな笑顔が印象的だ。

渡まち子

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