◆ルームシェアする若者たちの、どこか異質な関係(55点)
日本の都市部の家賃は世界的にみても高額だが、欧米のようにルームシェアが普及することはあまり無い。間取りや国民気質の問題もあるが、不動産関連の慣例や契約が案外ガチガチで、居住者ががんじがらめにされているのも理由のひとつだろう。
映画会社に勤める伊原(藤原竜也)は、売れないイラストレーターの未来(香里奈)、大学生の良介(小出恵介)、人気俳優のカノジョで無職の琴美(貫地谷しほり)ら3人を自らのマンションに住まわせ、共同生活を送っていた。どこか上っ面だけのつきあいながら、バランスの取れた関係を保っていた彼らの前に、あるとき男娼を自称するサトル(林遣都)が現れる。
ミステリ要素のあるドラマで、テレビで流れる近所の連続暴行事件のニュースが、なにやら不穏な空気を演出する。出てくる連中は、本人理解のためにもっとも重要な「本音・本性」を、心の闇の中に隠している様子。一緒に暮らしていながらすべてをさらけ出すわけではない、見ている側はどうにも居心地の悪いコミュニティを、狭いマンション内で形成している。
こうした設定は、もっと映像に凄みを出せる監督が作れば魅力があるのだが、この映画には足りない。
噂のラストも、本来なら気味悪さ+説得力あり+しかも共感、といったあたりを狙えばもっといい味を出せたのだが、不発である。これは登場人物がこぞって変なやつらばかりで、その奇抜さを解消せず突っ走ったのが原因と思われる。
彼らの生業というか昼間の生活。すなわち社会との血肉を持った関わりをほとんど描かぬものだから、観客はキャラクターに対して気を許せない。その結果、「おかしな連中だからどうせなんでもアリだろ」との意識を捨てきれない。だからあの結末にも驚かないし、犯人も最初の30分でバレてしまうのである。警戒している人間をだます難しさを、ミステリを作る脚本家、監督たちはもっと認識してもらいたい。
ロケ地も明大前、浅草、新宿等々、動線として不自然さを感じるもので、これがまた不安感を消せない要因となっている。それを狙ったといえばそれまでだが。
(前田有一)