パラレルライフ - 福本次郎

◆“パラレルライフ”という強引な理論をテーマにするのはよいのだが、説得力を持たせるディテールに乏しく、謎が謎を呼ぶような展開になっていない。もう少し緻密な構成で脚本を組み立てないと、この手のサスペンスは苦しい。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 リンカーンとケネディ、2人の米国大統領の経歴と死亡状況の共通点から、映画は見る者を“パラレルライフ”に導こうとする。そして現在、殺人犯として取り調べを受ける老教授もまたその存在を数学的に証明しようとする。強引な理論をテーマにするのはよいのだが、この作品は説得力を持たせるディテールに乏しく、謎が謎を呼ぶような展開にしたつもりなのだろうが、結局辻褄が合わずストーリーが破たんしている。もう少しリンカーン=ケネディ以外にも例をあげ、緻密な構成で脚本を組み立てないとこの手のサスペンスは成立しない。

 最年少で部長に抜擢されたキム判事は妻子にも恵まれ順調な出世街道を登っていた。ところが、不審な電話がかかってきた直後に妻が惨殺され、取材に現れた女性記者が過去の人物とそっくりな運命をたどる“平行理論”をキムに教える。

 その後も起きる不審な事故と殺人、キムは調査を進めるうちに自分だけでなく娘の命も危険にさらされていることに気づく。30年前に何が起き、今何が起きようとしているのか。しかも二つの人生を結びつける糸はもつれにもつれ、どのようにリンクしているか手掛かがつかめない。さらに意外な人物まで絡んでくるが、この男は30年前の事件の顛末を知っているのだから、殺人を未然に防げたはず。また、キム自身の身になぜ30年前の事件がトレースされるのかもわからず、最期まで不可解な印象はぬぐえない。

 パラレルライフとは逃れられない定めなのか。やがてキムを取り巻く人間はみな胸に一物持つ怪しげな人物に見え始め、キムも薬の副作用で精神が蝕まれていく。キムにとっての真実と客観的な真実の違いが大きな驚きとなって迫ってくるのだが、そもそも、キムに30年前の判事と同じ道をたどらせるには、彼本人のみならず周囲の人間まで用意する必要がある。やはり、物語の設定に問題があったと言わざるを得ない。まあ、すべてがキムの幻覚に過ぎなかったという夢オチにしなかったところは評価できるが。。。

福本次郎

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