パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ - 福本次郎

「人生とは、人が自分で作り上げる冒険」。破壊と創造を繰り返し、常に斬新さを求め続けてきたヒロイン。時代の変革し、刺激を吸収し、作品として昇華する。自らのスタイルを貫き通した女性ロックシンガーの生きざまを再現する。(40点)

 「人生とは、人が自分で作り上げる冒険」。その言葉通り、破壊と創造を繰り返し、常に斬新さを求め続けてきたヒロイン。時代の変革を象徴するような人物に近付き、刺激を吸収し、作品として昇華する。決して衆愚におもねることなく自らのスタイルを貫き通してきた女性ロックシンガーの生きざまを、膨大な映像と写真で再現する。しかし、カラーとモノクロが交互につなぎあわされたフィルムは全く前後の脈絡がなく、詩的な言葉で語られる禅問答のような独白が、彼女を常人の理解が及ばない異人種のような趣にする。

 シカゴで生まれ、各地を転々としたのちニューヨークに出たパティ・スミスは、メイプルソープと出会い同棲を始める。その後、チェルシーホテルやCGBGに出入りするスターたちとの交流が彼女の運命を一変させる。

 映画はパティの何を語ろうとしているのか。その音楽性? そのラジカルなメッセージ? それともステージやアルバムから受けるイメージとは別の家庭的な一面? カメラには一貫したテーマがなく、家庭用ビデオを回しているような距離感にまで近づくのだが、決してパティの内側にまで踏み込もうとしない。さらに筋道だった思考を断ち切るようなランダムな構成が、ただただ混沌の井戸に見る者を突き落とす。

 イラク戦争の反戦ソングではブッシュ大統領を強烈にこき下ろすのだが、そこでも「自由」や「権利」といった手垢のついた言葉で大上段からけなすだけ。詩人ならば、イラクで片足を失った米兵の苦悩や、家族を誤爆で殺されたバグダッド市民の嘆きといった、血なまぐさい現場から生まれた具体的な言葉で訴えるべきだ。そういったパティの凡庸さを強調するようなシーンはなぜか長々と挿入されているのに、彼女の魅力が伝わってくるような映像がほとんどないのはどういうことなのか。パティ・スミスというアーティストを主題に据えるのならば、少なくとも彼女をあまり知らない人間にもカリスマ性が感じられるような構成にしないと、彼女のファン以外は退屈を禁じ得まい。もっともパティ自身に今更人気取りなどする気はないのだろうが。。。

福本次郎

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