◆バレンタインデーに胸をときめかせ、その日だけは愛する人に自分の思いを伝えるためにテンションを上げる人々を散文的にスケッチする。しかし、各々のエピソードに共感できるディテールがまったくなく、リアリティに欠けている。(30点)
プロポーズに舞いあがる若者、不倫に振り回される女、初体験を済ませたい高校生、先生に心奪われる小学生、大切な人に会いに行く兵士、年輪を重ねた老夫婦 etc.。バレンタインデーという特別な一日に胸をときめかせ、その日だけは愛する人に自分の思いを伝えるためにテンションを上げる人々を散文的にスケッチする。しかし、各々のエピソードには共感できるディテールがまったくなく、ただ脚本家が頭の中で考えたような稚拙なシチュエーションは恐ろしくリアリティに欠けている。さらにコメディとしての作り込みも甘く、空回りする映像の連続に強烈な退屈と闘わなければならなかった。
バレンタインデーの朝、花屋の経営者・リードは恋人にダイヤの指輪を贈る。外科医と交際中のジュリアは出張先まで会いに行こうとする。フットボール選手のショーンはチームをクビになる。スポーツ記者のケルビンは街角レポートに駆り出される。
2月といえども陽光あふれるLAの街にいくつのも恋の花が咲く。今が幸せな者にトラブルが降りかかり、悩める者には更なる困難が待ち受ける。それでも、年に一度の聖人の愛を祝う日、日付が変わる前にはみなハッピーになっている。そのあたりの展開はお約束どおりなのだが、あまりにも設定が現実離れしていた。たとえば30歳くらいの小学校教師・ジュリアに教え子のエディソンが恋をするなどありうるだろうか。それもママの愛情の代わりを求めているのではなく本人はいたって本気だ。また、エロ電話サービスのバイトをしているリズは、デート中でも仕事中でも客からかかってきた電話に出てテレフォンセックスの相手をする。喧嘩した夫を捜しに来るエステルが屋外上映のさなかに大声で呼び出した揚句、スクリーンの前で抱き合うなどもってのほかだ。
この作品をバレンタインデーのデートで見たカップルは、きっと映画館を出た後、気まずい雰囲気になったに違いない。まあ、お互いツッコミどころを指摘し合って楽しむ手はあるが。。。
(福本次郎)