バッド・ルーテナント - 渡まち子

◆あっけにとられながら見ているうちに、不条理な暴力の世界と、呪術や異文化が混在する南部のニューオリンズの混沌が合致していく(60点)

 バイオレンスと宗教描写で問題になった同名映画のリメイクである本作は、悪徳と幻想が絡み合う異色のクライム・ムービーだ。ハリケーン襲撃直後のニューオリンズ。刑事のテレンスは、逃げ遅れた囚人を助けたことで表彰され昇進する。だがそんな華々しさとは別に、テレンスは、ドラッグに溺れ、ギャンブルに入れ込み、高級娼婦と関係するなど裏の顔を持っていた。不法移民一家の惨殺事件の担当になったテレンスは、捜査を続けていたが、愛人のフランキーが巻き込まれたトラブルから、ギャングから大金を要求され窮地に立たされる…。

 アメリカ映画の問題作を旧西ドイツ出身のヘルツォークがわざわざリメイクするというのが何とも不思議なのだが、それはさておき。ヘルツォーク作品の特徴は、険しい山岳や未踏のジャングルなど、原始的な荒々しさを見せる自然への畏敬の念にある。本作はニューオリンズという都会が舞台だが、ワニの顔をアップで映したり、イグアナの幻覚を見たりと、随所に“らしさ”を感じさせた。腰を痛めていつもヨロヨロと歩いている主人公のテレンスは、警官として不道徳の極みのような男。だからといって刑事としての職務を怠るわけではなく、目星を付けた惨殺事件の犯人逮捕に執念をみせるなど、矛盾したキャラクターだ。そんな彼の内なるせめぎあいを、ニコラス・ケイジが異様な迫力ととぼけたユーモアで怪演している。公私ともに追いつめられ袋小路に入った主人公には、何の計画も切り札もないのだが、なぜかコトがうまい具合に転がる不思議。あっけにとられながら見ているうちに、不条理な暴力の世界と、呪術や異文化が混在する南部のニューオリンズの混沌が合致していく。ラストの奇妙な幸福感は、鎮まることを知らず踊り続ける魂を抱えたテレンスの精神そのものだ。紙一重の人生の吉凶を、寓話のような世界観で描くあたり、さすがは鬼才ヘルツォーク。この人には既存の映画文法など無縁で、主人公の狂気がいつしかヘルツォーク自身のそれに思えてくるから興味深い。ちなみにオリジナルの主役はハーヴェイ・カイテル。ニコラス・ケイジと見比べてみるのも面白い。

渡まち子

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