◆オリジナルが過激なバイオレンスと宗教色で話題となったが、このリメイク版は控えめなクライムドラマで宗教色は一切ない。(60点)
ドイツの奇才ヴェルナー・ヘルツォーク監督が問題作『バッド・ルーテナント 刑事とドラッグとキリスト』(92)をリメイク。
舞台はニューヨークからニューオリンズに変更され、主演に人気スターのニコラス・ケイジを起用し、122分の力作として仕上げられたクライム・サスペンスドラマ。
ハリケーン・カトリーナに見舞われた直後、テレンス刑事(ニコラス・ケイジ)は、逃げ遅れた囚人を救出。これによってテレンスは警部補に昇進した。一年後、テレンスは恋人である娼婦フランキー(エヴァ・メンデス)とコカインを常習し、アメフト賭博に興じる悪徳警部補=バッド・ルーテナントとなっていた。ある日、セネガル系不法移民一家殺人事件が起き、テレンスが捜査の指揮を執ることとなるが……。
オリジナルが過激なバイオレンスと宗教色で話題となったが、このリメイク版はどちらかと言うと控えめなクライムドラマという感じで宗教色は一切ない。主演が人気スターで作風がソフトタッチだから、ヘルツォーク監督は万人ウケを狙ったとも考えられる。ヘルツォーク監督はあくまでもリメイクではないと言っており、このような点から考えるとそうだと頷けてしまう。
テレンスが粉末コカインを鼻で吸引するシーンが頻繁に観られ、彼が見る幻覚であるイグアナや射殺された男の“魂”が踊るブレイクダンスが印象深く、目に焼きついてしまうほどだ。また、ブレイクダンス直前に観られる麻薬ディーラーのフェイト(アルビン“イグジビット”ジョイナー)らが発砲し、射殺するシーンの豪快さは見事だ。これは、本作が持っている暴力性を最大限に発揮させたシーンだと言っても良いだろう。
悪徳刑事がドラッグに手を染め、破滅の一本道を突き進むドラマはありがちであるが、本作ではそんな悪徳刑事が荒廃しても結局は良い方向に向ってしまうのだから不思議に思えてしまい、逆に面白可笑しい。テレンス刑事は悪徳刑事であっても根は腐敗しておらず、捜査では良い結果を残しているのだから、良い方向に向っても納得できさえするのだ。
ラリったニコラス刑事に要注目だ!!
(佐々木貴之)