◆クルド人とトルコ人の関係を追求していくドキュメンタリー(70点)
日本映画学校に通っていた野本大監督はある日、在日クルド人難民のカザキラン一家に出会う。この出会いをきっかけに難民、クルド人とトルコ人の関係を追求していくドキュメンタリー作品。
二十代の若手かつ新人の野本監督が、難題なネタをクリアするために前向きな姿で挑戦していく様子が印象的だ。難しい疑問が一年経っても解決できない。それでも諦めることなく戦いに挑む。そんな勢いに乗って学校を中退し、挙句の果てにはカザキラン一家の祖国であるトルコへ赴き、クルド人とトルコ人の間に存在する問題を徹底的に追求し、知られなかった事実を掘り起こして解明していく。野本監督自身の苦悩はあまり感じられず、逆に現地の人々と楽しんでいる姿の方が強く印象に残る。
本作の完成に三年の月日を費やした野本監督。彼にとっての三年間は、人生において最大の苦楽を味わったことに違いはない。これが彼の今後の人生において大きな糧となるだろう。
映画としても報道番組では報じられないような驚愕の真実、メッセージをしっかりと伝えられており、観る価値のある立派な作品として仕上がっている。
素晴らしすぎる探究心、行動力、忍耐力を持ち合わせている野本監督の将来に期待したい。
(佐々木貴之)