バスティン・ダウン・ザ・ドア - 福本次郎

10メートルを超える波に挑む命知らずの若者たち。波は波頭を巻き込んでトンネルを作る。その美しさと勇気、スリルと陶酔、何よりもボードひとつで自在に走るという、麻薬にも似た恍惚と常習性を得るサーファーたちの姿がまぶしい。(40点)

バスティン・ダウン・ザ・ドア

© 2008 Bustin Down The Door, LLC

 10メートルを超える波に挑戦する命知らずの若者たち。波は迫りくる巨大な壁になり、波頭を巻き込んでトンネルを作る。あるものは垂直に落下し、あるものは横に滑るように巧みにボードを操る。今では当たり前のように見られる映像だが、その美しさと勇気、スリルと陶酔、何よりも不安定な水の上をボードひとつで自在に走るという、麻薬にも似た恍惚と常習性を得るサーファーたちの姿がまぶしい。これはまさに、「ビッグ・ウェンズデー」のドキュメンタリーバージョンだ。

 1974年、まだサーフィンがプロスポーツの体裁がなかったころ、南アフリカとオーストラリアから6人の若者が波を求めてハワイにやってくる。地元サーファーが中心だった大会に彼らも出場権を得て、徐々に認知されていくが、やがて尊大な態度が反感を招いて行く。

 海に対する尊敬と感謝を込めて波に乗る地元サーファーたちは、そこにある種の文化的な意義を見出している。一方、外国から来た若者にとって波は自分たちが征服する対象、スポーツとして楽しんでいる。サーフィンに対する意識の違いが彼らの間に軋轢を生み、果ては暴力沙汰にまで発展する。カメラはサーフィンの負の歴史にまでスポットを当て、当事者にインタビューする。ただ、彼らが存命なのだから実際に再会させて当時のことを語ってもらうくらいの仕込みがほしかった。すでに和解は成立しているのだから双方わだかまりはあるまい。

 映画はプロサーフィン創成期にかかわった6人のインタビューを中心に、 70年代の映像を挟むような構成を取る。今や50歳を超えた彼らの昔話は、多分に自慢に走りがち。だが、そうした自己宣伝の才能もプロには必要であり、一線を退いても今なお現役で海に入ろうとする純粋な気持ちだけは衰えていない。「サーフィンは人生、永遠の情熱」と言い切るサーフィンに対する愛があふれんばかりだ。最後に、サーフボードを抱えビーチに向かう3人の男の後ろ姿が挿入されるが、これも「ビッグ・ウェンズダー」へのオマージュだろう。サーフィンとは青春と友情のシンボルなのだ。

福本次郎

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