◆3Dらしく急降下や突進を繰り返しながら、縦横無尽に空間を飛びまわるヒロインの戦いっぷりは、魅力的だ(50点)
人気アクションシリーズ最新作のウリはシリーズ初のフル3D仕様。物語に深みはないが映像はなかなか面白い。ウィルス感染によって無数のアンデッド(ゾンビ)が誕生し、荒廃した世界。東京でも感染者が現れ、街の機能は停止しているかに見えたが、地下に潜ったアンブレラ社は密かに活動を続けていた。生き残った人類を探して旅をする女戦士アリスは旧知のクレアと再会するが、彼女は記憶を失っていた。2人は安全が保障されている船「アルカディア号」を目指してLAへと向かうが、そこで目にした光景は、何千というアンデッドで埋め尽くされた中、堅固な刑務所に立てこもる僅かな人間の姿だったが…。
映画冒頭に自らのクローンを引き連れて戦うアリスのビジュアルは、まるで忍者の“くのいち”のよう。それでも3Dらしく急降下や突進を繰り返しながら、縦横無尽に空間を飛びまわるヒロインの戦いっぷりは、魅力的だ。強すぎるアリスのクローン増殖という大風呂敷は、本作では一応畳まれ、解決を見る。東京でのシークエンスで第一感染者として中島美嘉が出演するなど、日本生まれのゲームに対しリスペクトが見られるが、物語の主要な舞台はLA。アンデッドから逃れ安全な船へと向かうため刑務所内が戦いの場となるが、3Dを意識したスローモーションの映像が多用されるため、バトルシーンのテンポが損なわれるのが残念だ。ただしシャワー室での水を効果的に使った場面は美しく、見応えがある。顔を覆った謎の巨人マジニの登場はゲームファンには嬉しいだろう。だが、なんといっても本作の新キャラの目玉はウェントワース・ミラー演じるクリスの登場だ。といっても最強の敵ウェスカーの前ではいまひとつ頼りにならないのがご愛嬌だが。東京でもアルカディア号でもアンブレラ社のセキュリティが甘すぎること、最強のはずのウェスカーのパワーが中途半端なことなど、ツッコミどころは多く、人間描写もないに等しい。だが、このシリーズにドラマとしての深みなど誰も求めていない。ひたすらゾンビをぶっ殺し、障害をクリアしながら前進するのみだ。今度こそ災いの源を倒したかと思いきや、エンドロールの後にワンシーンが用意され、物語はまだまだ続きそうな気配である。となれば、ミラのファンとゲームファンは、必見の作品ということになろう。
(渡まち子)