劇映画「ミルク」の公開に伴って再注目されているドキュメンタリー(70点)
1984年の作品だが劇映画「ミルク」の公開に伴って再注目されているドキュメンタリーだ。ゲイとして全米初の市政執行委員に当選したハーヴェイ・ミルクは、同性愛者の権利獲得問題だけでなく、有色人種や移民、老人や身障者など、すべてのマイノリティのために草の根運動を行なったこと、法や政治を動かすためにディベートの腕も磨き、資金集めも行なう現実的で有能な政治家だったことが分かる。ミルクを知る数多くの友人・知人のインタビューと在りし日の貴重な映像が満載だ。
ミルクの少年・青年時代やゲイを自覚したいきさつなどがほとんど語られないのは残念だが、それよりも注目すべき点はミルクと市長が銃弾に倒れた後の展開だ。二人を殺したダン・ホワイトの裁判の経緯と結果を見ると、70年代の米国の差別意識の根深さに愕然とする。45,000人もの人々がロウソクを灯して行進する静かな抗議の映像は感動的だ。アカデミー最優秀長編記録映画賞受賞作。
(渡まち子)