復活したヴァン・ダムの最新作。ヴァン・ダム主演作を銀座シネパトスで見ることができる幸せを噛み締めるべきだろう(点数 70点)
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ジャン=クロード・ヴァン・ダムは、90年代に最も輝いていたアクション・スターだ。
過去には、ジョニー・トー、リンゴ・ラム、ツイ・ハークという、香港の3大監督が、ハリウッド進出の際にヴァン・ダム主演作を撮っている。また、ピーター・ハイアムズ、ローランド・エメリッヒ、ジョン・G・アヴィルドセンら、評論家には評価されなくても、それなりの娯楽作をきちっと作ることができる職人監督と組んでいて、筋金入りのB級魂を濃厚に感じさせる。
そんな彼が最近、注目を集めている。
過去のアクション・スターたちが結集した「エクスベンダブルズ2」で悪役を演じ、シルベスター・スタローン相手に死闘を繰り広げ、さらに、「ユニバーサル・ソルジャー 殺戮の黙示録」と本作が、続けて銀座シネパトスで公開となった。
「復活」と言ってもいいかも知れない。
1960年生まれのヴァン・ダムが、現役のアクションスタートして活躍できるのもあとわずかだろう。
ヴァン・ダム主演作を上映し続けてきた銀座シネパトスも、閉館が決まっている。
ヴァン・ダムとシネパトス。時代に取り残された、アクション・スターと、閉館が決まった映画館の、最後の輝き。
そう考えると、本作が非常にかけがえのないものに思えてくる。
舞台は東欧のモルドバだ。肉屋のゴール(ヴァン・ダム)は、実は元傭兵で、裏では人身売買組織にさらわれた子供たちを救出するプロフェッショナルだった。
あるとき、救出の巻き添えになって少女たちが死んでしまい、以来、裏の仕事から身を引いていた。だが、米国人格闘家の娘が誘拐され、救出を依頼される。
冒頭から、アクションの連続だ。ヴァン・ダムはもちろん、昔のようには動けない。
細かくカットを割っているのは、動けないのをごまかすためだろう。ダブル(スタントマン)を使っていると思われる場面もある。
得意だった開脚も見せてはくれない。それでも、編集やカメラワークで、アクションはわりとうまく処理されている。手元でクルクルとナイフを回すのがカッコいい。
救出の巻き添えで死んだ少女たちを、主人公が幽霊として見るという趣向も面白い。
また、いったんは裏の仕事をやめてしまった主人公の再起と、ヴァン・ダムの復活が、だんだん重なって見えてくる。
中欧のハードボイルドな雰囲気と、最後まで興味を引くストーリーもよかった。
監督は「CUBE ZERO」のアーニー・バーバラッシュ。「アサシンゲーム」という未公開の作品で、すでにヴァン・ダムとコンビを組んでいるという。
また、主人公の息子役で、ヴァン・ダムの本当の息子クリストファー・ヴァン・ヴァレンバーグも出演している。まさに「ヴァン・ダム一家」で作られた映画なのだ。
作品の出来はヴァン・ダム映画のアベレージ以上でも、以下でもないが、ヴァン・ダム映画を銀座シネパトスで見るという、もう二度と叶わないであろう贅沢を味わうために、多くの人に足を運んで欲しい。
(小梶勝男)