◆キレ味抜群で見応えのあるアクション(90点)
犯罪事件が発生すればすぐさま空を飛んで現場に現れ、事件をあっという間に解決させる超人的な男ハンコック(ウィル・スミス)。だが、彼は超人パワーで道路や建物を破壊しまくる上に酒浸り、口が悪い、だらしないということで世間からは相当嫌われている。そんな彼がたまたま列車事故に遭遇しかけた PR会社の社員レイ(ジェイソン・ベイトマン)を救出。レイが恩返しとしてハンコックを皆から好かれる理想のヒーローにさせようとするのだが・・・・・・。
注目したいポイントは、今までの人から愛される理想的なヒーローという定石をあえて崩して嫌われ者のヒーローという設定にしたことである。このアイデアは目新しい上にユニークで興味深い。近年のハリウッドで製作されているこの手の作品はアメコミ原作がメインであることが多いが、本作はまったくのオリジナルであることに驚かされる。
ハンコックがレイのサポートで愛されるヒーローになろうとする姿を面白可笑しく描き、そこにレイの妻メアリー(シャーリーズ・セロン)との関係が描かれる。このドラマ展開が最大の注目ポイントである。メアリーがこれまたしっかりと驚かせてくれるキャラクターであり、その活躍ぶりを存分に満喫していただきたい。ハンコックとメアリーの絡みが作品を最大に面白く昇華させていると言っても過言ではない。
ピーター・バーグ監督がキレ味抜群で見応えのあるアクション描写を魅せつけている。冒頭の高速道路でのパトカー数台がマシンガンぶっ放し犯人の車を追跡するシーンにはじまり、クライマックスまで迫力を存分に発揮しており、前作『キング・ダム/見えざる敵』(07)を遥かに上回る最高に面白いアクションシーンの数々を楽しめる。そこに笑いの要素も加味されているので面白くないわけがない。
上映時間は93分。この手の大作SFヒーローアクションは2時間を越えるモノも少なくはない。それに比べると珍しく思える。面白い部分をしっかりと凝縮させて比較的短い時間にまとめているので気軽に楽しめることに間違いはない。作品の出来栄えも良いが、このポイントも高く評価したい。本作のようなお手頃な娯楽大作映画を今後も期待したい。
(佐々木貴之)