ハプニング - 岡本太陽

人が何の前触れもなく突然死に始める。アメリカを震撼させる原因不明のハプニング!(65点)

© 2008 TWENTIETH CENTURY FOX

 M・ナイト・シャマランは知る人ぞ知る『シックス・センス』の監督だ。『シックス・センス』があまりにも評判が良かったため、人々は彼の新作に期待し過ぎる傾向にあり、『アンブレイカブル』『サイン』はまぁまぁの評価だが、続く『ヴィレッジ』『レディ・イン・ザ・ウォーター』は散々な結果に終わっている。それでもなお新鮮なアイデアを出し続ける彼の新作映画がこの夏公開になった。『ハプニング(原題:THE HAPPENING)』と呼ばれるこの映画もまた彼の作品の流れを汲む深謀な作品となっている。

 夏のある朝、ニューヨークでそれははじまった。人々が突然何の前触れもなく死に始めたのだ。犠牲者の傾向はこうだ。まず第1に、言語を喪失し、第2に身動きしなくなり、そして第3には自殺するために動き出すというものだ。ヘアピンで喉を刺したり、ビルから落下したり、銃で頭を撃ったり、と自殺の方法は様々だ。フィラデルフィアで科学の教師をしている主人公エリオットのもとにもニューヨークでの出来事が耳に入り、不安になるエリオットは妻のアルマ、親友のジュリアン、そしてジュリアンの娘ジェスを連れて、皆でジュリアンの母親の家に向かう。しかし、彼らが電車に乗っているとその電車が突然停車する。車掌は言う「誰ともコンタクトが取れなくなってしまった」と。車も持たないエリオット達は一体どうなってしまうのか…。

 キャストは異色の組合せで、まず主役のエリオットにはマーク・ウォルバーグが起用されている。今回のコメディ風の役柄にはピタリとハマっている。彼の妻アルマには『テラビシアにかける橋』や『銀河ヒッチハイク・ガイド』のズーイー・デシャネルが扮する。彼女自体はわたしのとても大好きな女優でいつも注目しているのだが、今回の役はかなりのミスキャスト。彼女のメロウな雰囲気はこの映画にはあまり必要ではなかった。そしてエリオットの親友で同僚のジュリアンをジョン・レグイザモが演じる。今回の彼の役はなんと普通で新鮮。今まで奇抜な役が多かった彼だが、今回はごく普通の父親を演じている。先日の「ジミー・キンメル・ショー」に彼が出演していた際にも、もう奇抜な役はやりたくないと言っていた。

 このM・ナイト・シャマランの最新作は彼の作品史上初のR指定を受けている。それだけに衝撃的なシーンがいくつかある。人が草刈り機自殺を図ったり血の気の多いシーンもあるのだが、人がただプラ?んと木にぶら下がっているシーンだけでも不気味だ。この映画では人がどうして死んでしまうのか、明確な原因を提示しないため、わたしは終わった時には消化不良気味になったが、この映画はある映画を思い起こさせる。

 それはアルフレッド・ヒッチコックの『鳥』だ。あの映画でも何故鳥が人を襲い始めたのか理由が説明されず、人々は鳥の攻撃に対しなす術がなく、逃げるしかない。『ハプニング』でも人は同じ状況に陥る。人々は見えない恐怖になす術がないのだ。ただ、この映画では人が死ぬシーンでは時に笑いが起こる。特に動物園のライオンに自身を食べさせる男のシーンでは大爆笑が起こった。この様に冗談の様なシーンもいくつか存在するためこの映画はB級映画かと思わされたりもする。

 この映画は世界の終わりを描いており、原因が分からずただ人が死んでゆくというアイデアは面白いが、シャマラン監督自身が手掛けた脚本の出来が非常に悪い。彼のアイデアが優れているため、見ている側は次にどんな事が起きるのか興味津々になって次に次にと観てしまうが、物語中になされる会話等も芳しいものではなく、彼のストーリーテラーとしての技量はあまり感じられない。シャマラン監督はもう『シックス・センス』を超える作品は作れないのではないだろうか。これから彼は、まずアイデアを出して、脚本は誰かに任せ、そしてその脚本を基に監督するといったスタンスで作品を作っていった方が良いのではないだろうか。

岡本太陽

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