◆“ちょっとおかしな”どころではない(80点)
ハウエルズ家のお葬式で繰り広げられるドタバタ騒動を、『スターウォーズ』シリーズの人気キャラヨーダの声でお馴染みのフランク・オズがブラックユーモアいっぱいに描き、さらにハートフルな温かさを取り入れた傑作コメディー。
冒頭にてハウエルズ家の父の遺体が他人と間違われて送られてくる。この時点で軽く笑わせてくれる。
その後、主人公であるハウエルズ家の長男ダニエル(マシュー・マクファディン)の従妹マーサ(デイジー・ドノヴァン)と、弁護士をしている真面目な婚約者サイモン(アラン・テュディック)がマーサの弟トロイ(クリス・マーシャル)を迎えに行く。トロイは薬学部の学生であるが、実はドラッグ製造に励んでいる悪いヤツでこの日も友人に売るためのドラッグを準備していた。マーサは緊張しているサイモンにドラッグを安定剤と間違えて飲ませてしまったのである。これが、ハウエルズ家のお葬式をハチャメチャにしてしまう原因となってしまう。個人的には、このドラッグの存在は本作を面白くさせるための活性剤だと言いたい。とにかくラリってしまったサイモンが面白さを存分に盛り上げてくれる。しかも思う存分に笑わせてくれるのである。サイモンの活躍ぶりは注目すべき最大のポイントであり、これだけでも見る価値は大きい。
続いて笑わせてくれるのは、ダニエルの友人である汗かきの心配性ハワード(アンディ・ナイマン)と、強気で常に不機嫌な車椅子に乗ったアルフィー叔父貴(ピーター・ヴォーン)だ。この二人による汚くて下品なやりとりがおバカコメディーとしての面白さを一段と弾き出す。強烈なインパクトを与えてくれること間違いなしだ。
他にもダニエルと弟で人気作家のロバート(ルパート・グレイヴス)による兄弟口論や、謎の参列者である小人男ピーター(ピーター・ディンクレイジ)を巡ってダニエル、ロバート、ハワード、トロイが繰り広げるドタバタも印象深い。
本作は、笑いを満喫させるべくストーリーを簡素化させたことと、登場人物を個性豊かなキャラクターとして設定した上に複雑さを感じさせないようにしたことが功を奏でたのである。
それにしても本作で描かれるお葬式は“ちょっとおかしな”どころではない。“かなりおかしすぎる”と言った方が妥当だ!!
(佐々木貴之)