ハイキック・ガール! - 小梶勝男

◆日本の伝統空手をそのままアクションに取り入れて、娯楽作に仕上げた本当の意味での「空手映画」。主演の武田梨奈は日本の女子アクションを担う存在になっていくと期待出来る(83点)

 ブルース・リーの「燃えよドラゴン」が日本公開され、ブームになった1970年代、香港から続々と上陸したクンフー映画は「空手映画」と呼ばれていた。だが、当然ながらアクションに使われていたのは日本の伝統空手ではなく、中国拳法、功夫だった。例外として、山下タダシの「ザ・カラテ」シリーズなどもあったが、伝統空手がベースとはいえ、動きはかなり誇張されていたように記憶している。

 「ハイキック・ガール!」が画期的なのは、伝統空手の型を、ほとんどそのままアクションに使っていることだ。間合いに入るまでの踏み込みの速さ、就き、蹴りのスピードはまさに本物。日本独特の空手の特徴がきちんとアクションとして表現されている。これぞ、世界のどこにもない日本のアクション映画といっていいだろう。

 監督の西冬彦は、元々、映画配給会社の社員で、チャウ・シンチーやトニー・ジャーから「日本の本当の空手映画が見たい」と言われ、会社を辞めて独立したという。最初に手がけたのは、企画・武術監督を担当した「黒帯」。監督・長崎俊一、脚本・飯田譲治とスタッフを映画のプロで固め、主役は八木明人、中達也と、本物の空手家を採用した。主役2人は役者としては全くの素人だが、存在感は抜群だった。記録映画などを除けば、全編に渡って伝統空手がそのまま格闘アクションに使われたのは、この映画が初めてだったのではないだろうか。

 ただ、「黒帯」は舞台が昭和7年で、何というか、辛気臭い話だった。そこで、今度は娯楽作の中で伝統空手を思い切り使おうと、西冬彦が満を持して原作・脚本・監督・プロデューサー、そして出演も務めたアクション映画が本作だ。

 空手道場に通う女子高生・土屋圭(武田梨奈)が、師匠(中達也)に認められたいばかりに、街で「黒帯狩り」を始める。強いといわれる空手家たちに挑戦する、一種の道場破りだ。勝ち続ける圭に、「壊し屋」と名乗る集団から声がかかる。武術や格闘技の達人たちを集め、依頼された標的を「壊す」集団だった。圭は入門テストとして様々な格闘家たちと戦うが、実は「壊し屋」たちには圭の師匠とただならぬ因縁があった。

 ストーリーは「5分に1回」というアクションのためにあるようなもの。何といっても驚きなのは、本当に当てるリアル・ヒッティングの空手アクションを現役の女子高生がやっていることだ。

 主演の武田梨奈は端正な顔立ちではあるが、空手の実力は相当なもの。ハイキックのスピードは凄い。容姿、アクションとも魅力十分で、今後、日本の女子アクションを担っていく存在になっていくと期待出来る。武田だけでなく、出演者すべて、アクションのレベルが非常に高い。中でも芦原会館の小林由佳は注目だ。武田とのキック合戦には興奮した。また、女子高生たちがあくまでもセーラー服にミニスカートでアクションをしているのが素晴らしい。

 そして、「黒帯」に引き続き出演した中達也が「黒帯」以上の技を見せてくれる。この映画の本当の主人公は、彼だろう。ラスト、様々な格闘家を相手に次々に披露する空手技は、本物の迫力に満ちている。

 西冬彦の演出は、突きや蹴りが本当に当たっている様を、これでもかというくらい、繰り返しスローモーションで見せる。「黒帯」で、技は凄いのにその凄さが伝わらないと批判されたことへの返答だろうか。映画としてはバランスを壊すほどの執拗なスローモーションなのだが、アクション・ファンにはそれが嬉しい。凄い技はスローで確認したいのだ。

 本当に日本独自のアクション映画といえる作品が、女子高生を主人公に誕生したことに、とても感動した。西冬彦、武田梨奈、中達也を中心に、今後も是非、本物の「空手映画」を作り続けて欲しい。

小梶勝男

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