ニード・フォー・スピード - 青森 学

CG(コンピュータ・グラフィック)無しのカースタントはビデオゲームの実写化である以上避けられない選択。(点数 85点)


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主人公は逃げない。
ヒロインを置き去りにするようなカットがあるが実は逃げない。
親友の仇であっても見捨てない。
この映画が世界で先んじて公開され高い評価を得ている理由のひとつに主人公のヒロイズムにある。
もちろん超高級スポーツカーのスタントは見所なのだが、口数は少ないが熱いハートを持つ主人公にしびれる人もまた多いだろう。

人がクルマに惹かれるのはクルマが単なる交通の手段だけなのではなくて、そのスピードがドライバーに与える全能感にある。
非力な人間が人間の感覚を超える時速300kmの世界へ引き込まれそれを制御することで人間は陶酔にも似た全能感が得られるのだ。

だから人間はクルマに、とりわけスポーツカーに惹かれるのだ。
この『ニード・フォー・スピード』でもそういった人間の原初的な欲求を強く刺激しておりCG無しのカースタントは卓越したドライビングテクニックで人間の可能性を限界ぎりぎりまで引き出している。

実際には無いもの、架空のものをCGで表現すればさほど違和感は無いのだが、そうではない実在するものがCGになるとどうしても現実感を喪失してしまう畏れがある。
だからこそ普段はお目にかかれないスーパーカーであっても実物に拘ったのはそのリアリティを失わないための配慮だったのだろう。
それは正解だったといえる。ゲーム版の『ニード・フォー・スピード』はCGだが、それが実写化されることは、単なる映画化以上に大きな意味があるのだ。
ゲームでは描写しきれない実車の臨場感がより精緻に再現されているのは実は実車でなければゲームの焼き直しに過ぎず映画化する意義も半減する。
だからこそ製作陣は実車に拘ったのだろう。
リアルなカースタントはゲームから生まれた映画にとってそれを補完する必要があった。
つまりCGを使わない作品づくりは必然だったのである。この作品がCGで作られていたらそれはゲーム版の延長でしかない。
無粋な詮索だが、実写版『ニード・フォー・スピード』は練られたコンセプトのもとに製作された映画であると想像する。

車載カメラの視点を多く用いて迫力のある映像も良いが、クルマが渋滞を避けて脇道に逸れてからジャンプしてショートカットするゲームでもお馴染みのアクションも忠実に再現されておりゲーム版『ニード・フォー・スピード』のファンも納得のスタントになっている。

マフラーを外しただけのクルマのエンジン音にはない本物のモンスターマシンのエンジン音が堪能できるのも良い。
肉食獣が威嚇するようなエンジンの咆哮にアドレナリンが沸騰する。
迫真のカースタントは目だけでなく耳でも体感できる。
劇場に足を運んで『ニード・フォー・スピード』の腹腔に響くようなサウンドを体験するのもお奨めだ。

青森 学

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