ナンネル モーツアルト 哀しみの旅路 - テイラー章子

映画作りのための時代検証の甘さがちょっと残念。(点数 70点)


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フランス映画、「MOZART’SISTER」、邦題「ナンネル モーツアルト 哀しみの旅路」を観た。
日本では、限られた映画館で公開されていたらしいが、ここでは ごく限られた劇場で、1週間だけの公開だった。
英語字幕つきのフランス映画は ここでは 人気がなくて観る人が少ないので 公開されてもすぐに終わってしまって、ビデオも出ないので、一度見逃すと二度と見る機会を失う。それにしても何とセンスのない邦題だろう。
「哀しみの旅路」とは何のことか?べとべと湿っていて気持ちが悪い。
映画と全然そぐわない。

http://www.youtube.com/watch?v=LC8uDF9PVoI

監督:RENE FERET
キャスト
父レオポルド  :MARC BARBE
母アンナマリア :DELPHINE CHUILLOT
姉ナンネル   :MARIE FERET
弟ヴォルフガング:DAVID MOREAN

【ネタバレ注意】

ストーリーは
1763年 モーツアルト一家は 王侯貴族たちの招聘に応じてヨーロッパ各地を演奏旅行している。
一行は 父レオポルド、母アンナマリア、14歳の姉ナンネルと 10歳の弟ヴォルフガングの4人だ。
父レオポルドは 5歳で早くも作曲をし、ピアノ ヴァイオリンを自由自在に演奏することができる 息子ヴォルフガング アマデウスに、ヨーロッパデビューさせることが目的だった。
パリをめざす途中で、一行の乗った馬車の車軸が折れてしまう。修理のために世話になることになった修道院には、フランス王 ルイ15世の3人の娘たちが暮らしていた。

ナンネルはここで 3人の娘のうち末娘のリサと親しくなる。リサはベルサイユで暮らす兄の音楽教師に恋をしていた。
身分の違いで一緒になることはできないが 自分の思いだけは伝えたい。
馬車の修理が終わり一家はベルサイユに向かうが、ナンネルはリサの恋文を託されていた。
ベルサイユで 父レオポルドは ヴォルフガングをみごとにデビューさせる。音楽の神童は どこでも歓迎された。
そしてナンネルは ルイ フェルデイナンの音楽教師に無事リサの恋文を届ける。
その時に ルイ フェルデイナン王太子に 呼び止められたナンネルは 求められるまま、王太子のために歌い ヴァイオリンを演奏する。そして14歳のナンネルとフランス国王の王太子は互いに惹かれあう。

王太子ルイ フェルデイナンはナンネルの音楽的才能を高く評価して 二人はしばしば会う様になる。
ナンネルは ルイのために 自分が思いついた曲を楽譜に残して捧げたい。
しかし、父レオポルドは女に音楽理論は理解できない と断じて作曲を禁じた。
父は 幼いときからナンネルにクラビーア、チェンバロ、ピアノ、ヴァイオリンは教えたが、弟の伴奏役として考えて、女は結婚することが一番良いと、頑なにに信じていた。
ナンネルは 王太子に役に立ちたい一心で 家族がヨーロッパ旅行している間 一人パリに残り作曲の勉強をして、いくつもの曲を王太子に捧げる。しかし、彼は妻を迎えなければならず、妹のリサからも、別れるように宣告されて、ナンネルの恋は終わる。
というお話。

撮影は本当に ベルサイユ宮殿で行われた。
18世紀のブルボン王朝の華麗な宮殿、、、王侯貴族たちの美しい衣装、、そしてモーツアルトの音楽、、、これだけそろっていれば、他に何が必要だというのだろう。
とても美しい映画だ。
ヴォルフガング アマデウスを演じたデビッド モーランは 本当にヴァイオリンを上手に演奏した。
ピアノを弾いている真似はできるが、ヴェイオリンを弾く真似はできない。
本当に上級レベルのヴァイオリンを弾ける子供をアマデウスに抜擢していて 音楽だけでなく彼の演技も とても良かった。
利発そうな愛くるしい顔、10歳ころの男の子は本当に可愛い。
彼がベッドで でたらめを歌っている。
するとナンネルが そのメロデイーに合わせて低音で歌い始める。
二人してふざけて重唱しているうちに「これはいけるぞ。」とばかり、ベッドを飛び出してオルガンで連弾するシーンが とても良かった。こんなふうにして曲が出来てくることがわかって、興味深い。

ヴォルフガングが 何の土台もないところから 一人飛びぬけて天才として出てきたわけではなくて 作曲家としても優れたピアニストでもあった父と、声楽にもピアノにも優れた才能を持った姉がいて、それをしっかり支える母もいて その上でヴォルフガングが育ってきたことが よく理解できる。父親も母親もしっかりと二人の子供に愛情を注ぎ込んでいる。
ザウスブルグの彼の家に行ってみると、彼は家族に沢山の手紙を残しているが、いつも家族への愛に満ちていて、家族の調和がいかに 彼にとって大切だったかが想像できる。だから、レオポルドとアンナマリアが、思ったとおりに映画で描かれていて嬉しかった。

ナンネルが恋に陥るルイ フェルデイナン役も、とても良かった。ちょっと病的で ひ弱な感じで かんしゃくもち。
決して王座に座ることなく 父ルイ15世よりも先に死んでしまう永遠の王太子。本当にこんな人だったのだろう。
ナンネル役は この映画の監督の娘だが、とても清楚で良かった。この恋のあと、ナンネルは作曲家としても、音楽教師としても成功したに違いないのに、自分で選んだ夫を父レオポルドに反対され、裕福な判事のもとに嫁がせられ 愛のない結婚生活を生きた。

ヴォルフガングも、コンスタンサと結婚して 貧困のどん底で若死にする。
ナンネルも、ヴォルフガングも 父の庇護のもとで子供時代をもっとも幸せに過ごしたが、大人になってからはそれがかなわなかった。
事実が痛ましいだけに、初々しい二人の子供時代の才能と美しさが際立っている。

とても満足した。良い映画だ。
厳密に時代検証すれば、ナンネルが恋をしたルイ フェルデイナンは 映画のように17歳ではなくて、もうおじさんだったはずだ。
その息子(後のルイ16世)も マリーアントワネットもベルサイユに居て良いころの話だ。映画作りのための時代検証の甘さがちょっと残念。

テイラー 章子

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