ナイト・トーキョー・デイ - 福本次郎

◆孤独を友とし絶望と添い寝する謎に満ちたヒロイン。そんな彼女が殺すべき男と恋に落ちた時、運命の歯車が狂い始める。大都会の空虚と寂寥、映画は夜の東京を舞台に、胸に哀しみを湛えた殺し屋の切ない感情を切り取ろうとする。(40点)

 孤独を友とし絶望と添い寝する女。他人とのかかわりを最小限にとどめ、深夜に働き昼間は息をひそめている。彼女の事情を録音技師は探ろうとするが、プライベートはほとんど明かさない。そんな謎に満ちたヒロインが殺すべき男と恋に落ちた時、運命の歯車が狂い始める。映画は夜の東京を舞台に、胸に哀しみを湛えた殺し屋の切ない感情を切り取ろうとする。不眠症ゆえに、考えすぎるのを避けるために黙々と肉体労働にいそしむ姿が、大都会の空虚と寂寥を象徴しているようだ。

 築地市場で働くリュウは殺し屋という裏の顔を持つ。ある日、ナガラの娘・ミドリが自殺、ナガラはミドリの夫・ダビを逆恨みし、ナガラの意をくんだ部下のイシダがリュウにダビ殺害を依頼する。ところが、ダビに接近したリュウはダビに惹かれていく。

 ダビはワイン店で働くスペイン人だが、妻を追い詰めるような悪人には見えない。ナガラはミドリと彼の結婚に反対だったのか、ダビがミドリを死なせたと思い込んでいる。しかし、ダビが実際にミドリを手に掛けたのならともかく、ダビもミドリを愛していたのだ。ミドリが死ぬほど苦しんでいたのに気付かなかったダビに対してナガラが怒りを覚えるのは理解できるが、分別盛りのナガラにとってそれが殺人の動機になるほどの憎悪になるとは考えにくい。もう少し説得力のある設定にしてほしかった。

 リュウはダビとのデートとセックスを重ね、やがて殺人の契約を反故にする。ダビとの付き合いは、リュウにとって自らの身を危険にさらすこと。ダビとラーメンを食べながら相好を崩したり愛し合った翌朝に思い出し笑いをする以外リュウは表情の変化を抑えているが、本来なら殺人者として生きる道を選んだ時点で心を捨てたリュウが禁断の愛に苦悩する様をもっと描き込むべきだろう。また、本来語り部になるべき録音技師の存在も影が薄く、たとえば彼にリュウの闇を代弁させるなどといった効果的な使い方があったはず。アクションシーンがまったくなく、電車内を模したラブホテルでのセックスシーンが最大の見せ場というのは寂しかった。

福本次郎

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