◆十代の人間とヴァンパイアの恋を描く世界的ベストセラー小説待望の映画化!(50点)
人間とヴァンパイアの恋。人間は年をとり、やがて死ぬ。しかし、ヴァンパイアは何百年も生き続ける。悲恋にならざるを得ないその恋は、古いものだと先日『フロスト×ニクソン』での演技で今年のアカデミー賞にノミネートされたフランク・ランジェラの『ドラキュラ』や、最近では極上のスウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』等で、今までに何度となくで描かれている。映画『トワイライト?初恋?(原題:Twilight)』はその悲恋の物語に新風を吹き込むハリウッド映画である。
本作はアメリカ人作家ステファニー・メイヤーの同名小説が原作であり、全4巻(日本語翻訳版は13巻)からなる原作本は全世界で2500万部を売り上げるベストセラーとなっている。『ハリー・ポッター』が少年達のカリスマ本とするなら、ロマンティック・ファンタジーである『トワイライト』はティーンの女の子達のそれにあたる。
17歳のベラ・スワンは母の再婚で灼熱の地アリゾナから父の住む空は常に雲に覆われ、雨の多い西海岸のワシントン州フォークスに引越して来る。父とは長い事離れて暮らしていたため、互いにぎくしゃくしてしまうが、そこでベラは新しい生活をスタートさせる。転校先の学校では初日に直ぐさま人気者になる彼女は、学校内で異彩を放つ色白でミステリアスなエドワード・カレンに出会い興味を抱く。そんな彼女はある日にエドワードに命を救われるのだが、彼の超人的な能力を目の当たりにし、彼が何者なのか調べ正体を突き止める…。
『サーティーンあの頃欲しかった愛のこと』『ロード・オブ・ドッグタウン』で知られるキャサリン・ハードウィックが監督を手掛ける本作の主人公、『イントゥ・ザ・ワイルド』に出演したクリステン・スチュワート扮するベラは常に人と距離を置く女の子。それでも彼女の心を虜にするのが『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のセドリック役で注目を集めたロバート・パティンソン扮するヴァンパイアの高校生エドワード。彼にはヴァンパイアの家族がおり、彼らを守るために人と関わりを持たない。ベラにも始めは冷たい態度をとるが、彼もまた初めてベラに会ったときに恋に落ちてしまっていたのだ。なぜなら彼は人のマインドを読む能力があるが、ベラにはそれが効かないからだ。
ヴァンパイアは血を飲んで生きる。もちろん本作に登場するヴァンパイア達も血は欲するのだが、ステファニー・メイヤーはそんな彼らにユニークな点を加えている。エドワードの義父カーライル(ピーター・ファシネリ)は外科医で血には抵抗力があり理性を貫く事が出来る。エドワードはそんなカーライルのもとで暮らしているため、血の誘惑を恐れてはいるものの、彼も人を殺す事はなく、ベラに自分たち家族は「ベジタリアンのヴァンパイア(人間の血は飲まず、時々動物の血のみを飲む事)」だと冗談を言う。
それでもやはりベラへの恋心とヴァンパイアである身の上からベラを欲してしまうエドワードは自らを怪物と定義し、ベラに「本当に自分をコントロール出来るか分からない」と告白する。それでもベラは彼のその正直さを受け止め、彼を心から愛そうとする。なんとなく、血に対し理性を失う失わないのやり取りは『インクレディブル・ハルク』の怒りのコントロールのそれとの同様の点が見受けられる。
『トワイライト』の邦題には「初恋」というサブタイトルが付けられている。それはベラの、というよりは17歳でヴァンパイアになり、長い間生きてきたエドワードの初恋の事だ。ただ単に女の子の主人公の初恋の物語にしていない点はなかなか新鮮である。また、最近の十代の恋愛ものにはセックスのエピソードは欠かせない。『トワイライト』ではそれを血を飲む=セックスとして描いている。それゆえ、ベラとエドワードの間には常に性的緊張感があり、その彼らの姿がいじらしく、わたしたちはじれったい気持ちにさせられる。本作は現在日本で人気の携帯小説原作の映画好きには必ず楽しめる悲恋を描く作品である。
(岡本太陽)