米大手ワーナーブラザーズは、翌夏強化のため08年冬公開予定だった『ハリー・ポッターと謎のプリンス』を温存、金庫の奥深くにしまいこんだ。
その代わりに前倒しで公開されたのが、同じ英国のベストセラー小説『トワイライト』の映画化である本作。原作同様、10代の女の子の胸をときめかせるイケメン揃いの実写化だが、これが予想を上回る特大ヒット。捨て試合で思わぬ勝利を得たWBC2次ラウンド日韓戦の日本チームのような、旨みある興行となった。
アリゾナから越してきたベラ・スワン(クリステン・スチュワート)は、転校先の高校になじめずにいた。そんな彼女の気を引いたのが、地元クラスメートさえ近寄りがたい様子の寡黙な美少年エドワード・カレン(ロバート・パティンソン)。そしてある日、事故に巻き込まれたベラは、エドワードに人間離れしたパワーで救けられる。
徹頭徹尾女の子向けの、ファンタジック・ラブストーリー。若い女の子というものは、障害ある恋に燃える生き物であるが、この場合は男子の正体が人外の化け物という設定がそれにあたる。
だが、捨て身で命を救われ、誠実に家族を紹介され、ベラちゃんはあっさり恋に落ちる。ここから得られる教訓としては、イケメンなら化け物でもモテる、ということだ。
考えてみれば、森を飛び回るほど強靭な肉体、美しい顔、おまけに長生き(不老不死)。自制心が強く、安易に女の子に手を出すこともない。性欲に負けて狼になる人間の若者より、こっちのほうがずっといい。というか、読者の女の子にしてみれば、これぞ理想の彼氏像そのものだ。
だが、そもそもエドワード君の種族は、人間を食って生きるモンスターだ。もっとも、その種族の中にもいくつかあり、エドワードくんが属するカレン家の場合は人間界で生きるため、さっさとベジタリアン化した温厚な一派。そのおかげで、本来は食料であるベラちゃんとラブラブにもなれた。
われわれ人間であれば、いくらベジタリアンでも、牛肉に恋することはないが、なにしろベラちゃんはエドワード君に負けないほどの超美少女。要はここでも件の教訓が生きている、ということか。
(映画ジャッジ)