トゥルー・グリット - 中野 豊

1969年の名作『勇気ある追跡』の21世紀フルモデルチェンジ版光来! ジェフ・ブリッジスのコーエン(好演)が光る、泣いて笑って感動のウェスタン。(点数 85点)


(C)2010 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

イントロダクション。 ある老境を迎えた女のモノローグ(回想)で幕が開きま
す。

—若い女が父親の仇を倒した実話です。
私が14歳の時、トム・チェイニーが賭
けに負けた腹いせにある男を撃とうとしたのです。
それをとめようとした父を撃
ち殺し、金貨二枚と馬を奪って逃げました。—

西部のある街に父親が傭人に射殺されてしまったという14歳の少女マティ・ロス
(ヘイリー・スタインフェルド)が、遺体を引き取りにやってきます。
彼女は形
見の銃を手に復讐を決意するのですが、さすがに一人では無理な注文。
彼女は独
眼でアルコール依存の連邦保安官ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス
)を多額の報酬で雇うのです。
街にはもう一人、別件で犯人トム・チェイニー(ジョシュ・ブローリン)を追っ
ているラビーフ(マット・デーモン)というテキサス・レンジャーのボーンスプ
レマシー(笑)な男が居たのです。
同じ標的を追うトリオは、街をあとにリベン
ジ・ジャーニーへ。
やがて3人は、奥深いインディアン居留地でギャング団に匿われているトム・チ
ェイニーを発見するのですが……。

本作は、あのジョン・ウェインがアカデミー賞(R)主演男優賞に輝いた『勇気ある
追跡』(1969年)の勇気あるリメイクでありますが、監督が前作を憶えていない
と語っていることから、チャールズ・ポーティスの原作を‘犯罪映画ジャンル派
’コーエン兄弟がNowなエレメントで再映画化した西部劇といえるでしょう。

物語は新旧変わりありませんが、ケレン抜きのカラッとライトで‘フロンティア
精神’というアイコンが存在していた時代の前作とは随分と印象が異なります。

本作は、オープニングから、テレンス・マリック(『シン・レッド・ライン』な
ど)作品ではないのか?と目を疑うほど詩的なリズムを奏でます。
コーエン兄弟
の‘コミカルな毒’は薄く、奇をてらうこともないストーリーテラーぶりに驚か
されました。

演出もさることながら、絶妙なキャスティングにも注目です。
ジェフ・ブリッジスがとにかく凄い! ガテン系やんちゃ青年役で、1970年の前
半に鮮烈デビュー。『ラスト・ショー』(1971年)や『サンダーボルト』(1974
年)でアカデミー賞(R)助演男優賞にノミネートされ、コーエン兄弟の『ビッグ・
リボウスキ』(1998年)や『シービスケット』(2003年)、はたまた『アイアン
マン』(2008年)などを経て、どんどんビッグに巧くなっている「アラ還」俳優。
第82回ア
カデミー賞(R)主演男優賞に輝いた『クレイジー・ハート』に続き素晴らしい演技
で魅せます。
そして、マティを演じたヘイリーちゃんは撮影当時13歳にして、憎たらしいくら
い賢い少女役を熱演。1969年版・撮影当時成人していたキム・ダービーを圧倒し
ます。
大根グレン・キャンベル(カントリー&ウェスタン歌手)のラビーフにいたって
は、演技派のマット・デイモンにバトン。
また、トム役のジョシュ・ブローリンは『ノーカントリー』に続いて、またまた
逃げる ランナウェイ(笑)。

キャスト・スタッフ・製作陣の三役揃い踏みの、今年観ておきたいウェスタン映
画の逸品です。

■2010年 アメリカ映画/上映時間:110分/監督・脚本:ジョエル&イーサン・
コーエン/出演:ジェフ・ブリッジス、マット・デイモン、ジョシュ・ブローリ
ン、バリー・ペッパー、ヘイリー・スタインフェルド

中野 豊

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