映像は彼女たちの人間らしさを前面に出し、生きている素晴らしさを謳いあげる。(点数 50点)
(C)2011「デンデラ」製作委員会
「めでてぇの~」と白装束を着せられて雪深い山に運ばれる老女。体
は動くのに、時期が来たからと村を追い出される。彼女自身、先にあ
るのは“死”だけと知りつつも無理矢理“極楽浄土”が待っていると
思い込もうとしている。まだ死にたくない、寒いのや痛いのはイヤ、
そういった本音を押し殺して運命を受け入れようとする彼女の姿が哀
しい。物語は姥捨ての犠牲になった彼女の「その後」。“一度死んだ”
者の生命力は強く、因習から解放された老婆たちはたくましく美しい。
70歳になったカユは息子に背負われて“お山”に入るが、以前“お山”
に入った顔見知りに助けられ、小さな集落で目覚める。そこはメイと
いう老婆が築いた、捨てられた女のコミュニティ・デンデラだった。
デンデラは労働も食料も公平に負担し分配する原始的な共同体で、彼
女たちは“自分のために働く”楽しさにいきいきとしていて、モチベ
ーションがあれば人はいくつになっても元気でいられることを実感さ
せてくれる。だが、そんな場所でも50人も集まれば派閥ができトラブ
ルも起きる。命と感情がある限り、喜怒哀楽を抱える。映像は彼女た
ちの人間らしさを前面に出し、生きている素晴らしさを謳いあげる。
男社会への憎しみが100歳のメイを支えてきたのだが、野生の熊の出現
で計画が狂い始める。瞳に憎悪をたぎらせて執拗に集落を襲う熊は、
せっかく命を長らえたのだから心安らかに余生を送れという神仏から
のメッセージだったのだろうか。
(福本次郎)